「この人を育てよう」などと思ったことはなかった

「『終身雇用や年功序列の是非』ということに関しては、現時点では明確な答を持ち合わせていません」
「『終身雇用や年功序列の是非』ということに関しては、現時点では明確な答を持ち合わせていません」

【トップ交代について】

(受講者)宮内さんは2014年にトップを退任されましたが、それまでの間に次のリーダーを育てるために何か特別な訓練などを行っていましたか。

宮内:私は人材のトレーニングが下手な人間でして、常々、社員に「会社は教育機関ではない。会社に勉強をしに来てもらうのでは困る。勉強したものをアウトプットしてくれ」と言っています。会社に入ってきて「一生懸命勉強させてもらいます」なんて、そんな馬鹿なことがあるかと。

 そういうわけで、次のリーダーに関しても、意識して「この人を育てよう」などとは思ったことがありませんでした。ニュートラルに「誰が出てくるのかな」と待っていて、出てきた人間の言動を素直に見るという具合にしてきました。このやり方が良かったのか、悪かったのかはわかりません。ただポジションによって人は変わります。トレーニングして「これで大丈夫」と思っても、トップに立った途端、変わるということがあります。「トレーニングしたから大丈夫」という考え方には懐疑的ですね。

(受講者)長く経営者を務めてこられた宮内さんから見て、次代にバトンタッチする際に重要な点、注意すべき点は何だと思いますか。

宮内:私の前の社長だった乾さんは最後の5年間ぐらいは私を常に横にピタッとつけて下さいました。日々、経営者としてのトレーニングを積んでいくという考えだったのでしょう。その代わり、バトンタッチして「キミに任せたよ」と言ったら、あとは全く何も言いませんでした。明治の男でしたから、その辺は本当にスッキリしていましたね。

 私の後は井上亮が取締役兼代表執行役社長・グループCEOを務めています。先ほども言ったようにバトンタッチに当たってあまりトレーニングなどを意識したことはありません。

 トップも一人ひとり性格やタイプが違いますから、どういうバトンタッチの仕方がいいのか、やってみないとわからないところもあります。トップになるとやはり人は変わって行きます。その変わり方が良い方向である限り、各人がそれなりの独自色を出していくのを見守るのがいいのかなと思ったり、いや違うやり方がいいのかなと思ったり……。「これ」というスタンスは固まっていませんね。この先、5年、10年と十分なアドバイスが出来るわけではないでしょう。なにしろ会社が順調に動いているという結果が出ており、コーポレート・カルチャーが良い方向で維持されている限り今の形で良いのだろうと思っています。

(了)