オリックスの幹部で失敗したことがないという人は一人もいない

「『へたしたらつぶれる』という怖さをトップが心底から感じ、いざという時には這いつくばってでも頑張るという精神を持っていること。これが『中小企業文化』を継承する秘訣」
「『へたしたらつぶれる』という怖さをトップが心底から感じ、いざという時には這いつくばってでも頑張るという精神を持っていること。これが『中小企業文化』を継承する秘訣」

(受講者)オリックスは多角化でここまで大きく成長してきたというお話でした。新事業を手がけるものの、うまくいかなくて悩む企業は多いと思います。成功させるコツが何かあったら教えてください。

宮内:オリックスは「新しいことをやれ」「ただし儲からないものはダメだ」という2つの命題の中でいろいろな事業を手がけています。正直なところ、多くは失敗します。うまくいきません。新しいことをやってすぐにうまくいくことなんて、そうそうあるはずはないのです。私はいつも「成功率はイチローの打率より低い」と表現しています。実際、オリックスの幹部で失敗したことがないという人は一人もいないと思いますよ。つまり「失敗してもいいからやれ」というスタンスを持つことが重要なのです。

 また、さらに大事なのは上に立つ人間がそういう失敗を早く見つけることです。肩を叩いて「ご苦労さん、もういいよ」と止めさせる。こうすれば、どんどん新事業を手がけたとしても、さしたる損を出す前にシャットダウンできます。

 多くは失敗すると言いましたが、時に「やってみたら案外面白いぞ」「いい線いっている」というものが出てきます。こういう、「いけそうだ」というものには経営資源を集中的に投入する。こうすれば成功率は低くても、うまくいったものの実りは大きくなります。つまり予想外に儲かるようになるのです。

老人ホームと野球だけは別枠で考えている

(受講者)「儲からないものはダメ」ということでしたが、一方でオリックスは現在、一般的にはあまり儲からないとされているホスピタリティービジネスにも非常に力を入れていらっしゃいます。こちらはどんな思いで取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

宮内:ホスピタリティービジネスの中でホテル業、旅館業などは収益をきっちりと上げるべきビジネスとして見ています。しかし、有料老人ホーム「グッドタイム リビング」、高齢者向け賃貸住宅「プラテシア」などはそうはいきませんね。びっくりするような赤字を累積し、正直、ものすごく苦労しました。何度か事業をストップすることも考えました。しかし、ホームや賃貸住宅の入居者の評判はすこぶるいいんです。このビジネスに打ち込んで命がけでやっている社員もいます。「やめるわけにはいかん」「なんとかトントンにならないか」という思いでやっています。ほかの事業とは全く違う評価軸ですね。企業の社会的責任の一環でやっているというつもりは全くありませんが、全体のポートフォリオを考えれば、こういう事業があってもいいのかなと。株主総会では叱られますけど老人ホームと野球だけは別途に考えようとやって来ました(笑)。

次ページ 危機の時に必死に働くのは終身雇用の人たち