「うちの会社は中小企業」と思い続けることが必要

【オリックスの経営について】

(受講者)オリックスは中小企業文化があるというお話が非常に印象的でした。資本金2兆円超の大企業が中小企業文化を維持するというのは大変な努力が必要だと思います。企業風土を若々しく保つためのヒントがあったらぜひ教えてください。

宮内:これは一言で言うとトップの信条だと思います。トップや最高幹部が「うちの会社は立派になった」「日本を代表する大企業だ」などと思ったらもうダメですね。トップ自身が「うちの会社は中小企業だ」と思い続けることです。

 オリックスではこの半世紀近くの間にトップを務めたのは2人だけでした。1967年から80年まで乾恒雄さんが社長を務め、その後は2014年まで私が社長、会長、CEOなどを務めてきました。社長時代の乾さんは私に「この会社はへたしたらつぶれる」ということを徹頭徹尾指導してくださいました。だから私もそういう意識はものすごく強かった。社長に就任した後もそうです。

 実際、私自身が「これはダメもしれない」と感じた局面は何度もあります。役員になりたてだった1970年代には2度にわたるオイルショックがありました。その間にはニクソン・ショックもあり、我々のような新興企業は「生きるか死ぬか」という状況に追い込まれました。社長就任後の1983年には「世界船舶不況」に直面。1990年代に起きたバブル崩壊やリーマン・ショックも打撃は大きく、周囲のノンバンクはつぶれたり統合したりしました。金融ビジネスを営む独立系の企業で政府に頼らずに生き残ったのは我々だけではないでしょうか。

 こういう、「へたしたらつぶれる」という怖さをトップが心底から感じ、いざという時には這いつくばってでも頑張るという精神を持っていること。これが中小企業文化を継承する秘訣ではないかと思います。

大企業に向いているような人は採らない

(受講者)若々しい文化を継承するために、会社の体制として何か工夫すべき点はありますか。

宮内:先ほど創業から数年で中途採用をどんどん進めたという話をしました。この人材採用というのは企業文化の形成に大きな影響を及ぼすものではないかと思います。

 会社が小さい頃は新卒にしろ、中途採用にしろ、ピカピカの経歴の人は来てくれません。「なんだか訳がわからないけど面白そうな会社だな」と少し変わった人材がやって来る。会社側はどんなに若くても経験が浅くても、そういうやる気のある人材に重要な仕事をどんどん任せざるを得ません。そうすると、その人たちは「オレの会社だ」「オレが会社の経営を担っているんだ」という意識で一生懸命働いてくれる。重要な仕事の経験を積み重ね、ものすごく力をつけていきます。オリックスでは率直に言って、名もない学校、名もない企業から来た人材が大きく成長し、会社の中枢を担ってくれました。

 一方、ある程度、会社の名前が知れ渡るようになると、輝かしい経歴の人が受けに来てくれるようになります。研修などで見渡すと、非常に賢そうな顔をしている人たちが並んでいます。「キミはこの会社でどういうことをやりたいんだ?」と聞くと、「素晴らしい会社に入れていただいて大変うれしいです。多くのことを勉強させていただいて一生懸命頑張ります」というような優等生的な答えを返してくる。ある年の研修でこういう回答が続いた時、私は「これはダメだ」「こんなのばかり集めていたら会社はつぶれる」と思いました。以後、採用方針をかなり変えました。簡単に言えば、大企業のサラリーマンに向いているような人は採らないようにしたのです。こういうことも企業の社風をつくっていくのではないかと思います。

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