ミシュランに載ったラーメン店は、何を考えて店づくりをしたか

 では、どうやれば今までと違う仕事のやり方、人と違う考え方が生み出せるのか。そのヒントを示しましょう。

 ライフネット生命の近くに5年ほど前、新しいラーメン店ができました。非常に人気のあるお店で、既に3店舗を構え2014年から「ミシュランガイド東京」にも載るようになりました。東京にあまたあるラーメン店の中でも非常に高い競争力を持つお店です。

 ある時、僕はこのラーメン店の店主に「店をオープンするまでに何をしてきたのか」と聞いてみました。ラーメン店を開きたいと思っていた彼がお金を貯めて真っ先にやったこととは、「東京中のおいしいラーメン店に行ってラーメンを食べること」でした。実際、食べてみたら、どのラーメンもとてもおいしかったそうです。

 しかし、その一方で彼は「こんなお店を作ったらダメだ」と感じていました。なぜかというと、どのラーメン店も、入っているお客は男性ばかりで、人口の半分を占める女性がほとんど入っていなかったからです。「女性がひとりでも入れるラーメン店を作れば売り上げは2倍になる」。そう考えた店主は奥さまに協力してもらい、店づくりを始めました。

ほとんどのイノベーションは組み合わせから生まれる

「イノベーションを生み出すためには、いろいろなことを知っていることが重要です。簡単に言えば勉強が必要です」

 内装を工夫し、カフェのような雰囲気に仕上げ、女性ひとりでも気軽に立ち寄れる店にしました。紙エプロンや女性客には髪留め用のゴムを配り、食べやすさに配慮しました。

 女性向けをイメージして、野菜をふんだんに使用した「ベジソバ」というメニューも開発しました。これは、まさに従来のラーメンの概念を覆す一品です。スープはオレンジ色。ニンジンのピューレとムール貝のだしが融合しています。麺にはパプリカが練り込んであります。とにかくヘルシー。そして、メチャクチャうまい。ラーメンのイノベーションと言える一品です。

 イノベーションというと、アインシュタインの相対性理論のように、ものすごく賢い人が自分の頭でものすごいことを考えて、何もないゼロから新しいことを生み出すことをイメージする人が多いかもしれません。けれど現実には、こういうタイプのイノベーションは滅多に生まれません。ほとんどのイノベーションは実はベジソバタイプ。どこにでもあるものを組み合わせて新しいものを生み出すタイプのイノベーションが多いのです。

 ラーメン、ニンジン、ムール貝。どこにでもあるものばかりですが、この3つを組み合わせた人は過去にはいませんでした。だからこそベジソバはイノベーションなのです。

 ポイントは店主がムール貝が好きだったこと。ムール貝を食べたことのない人には、ムール貝とニンジンのピューレを合わせてみようという発想は生まれません。つまり、イノベーションを生み出すためには、いろいろなことを知っていることが重要です。簡単に言えば勉強が必要です。競争力を上げようと思えば勉強するしかありません。