皆さんはメチャクチャ恵まれた環境にいる

 この慶応ビジネススクールに集まっているのは、企業の経営幹部やこれからベンチャー企業を興そうという意気込みをお持ちの皆さんです。「今の日本の競争力が26位」と聞いた皆さんは、きっと「チャンスは大きい」とうれしくなったことでしょう。もし、うれしいと感じなかったのなら、ずいぶん頭がかたいと言わざるを得ません(笑)。

 皆さんはメチャクチャ恵まれた環境にいると思います。1990年代初頭、日本の競争力は世界トップとされていました。こういう時代では、皆さんがどんなに頑張って勉強し、知識を身につけても、それ以上、上に上がることはできません。いずれは落ちていくことが目に見えています。

 それに比べて、26位という位置づけは上げていくのにちょうどいい。慶応ビジネススクールでガッツリ勉強して10番ぐらい順位を上げればいいのです。先が見えている社会よりもずっといい。まさに「ほどよい湯加減」にあると言えるでしょう(笑)。

社会の不安定化は、若年人口が膨らむ「ユースバルジ」が要因

 日本のように労働力が800万人も不足する社会(2030年の予測)では、絶対に食いっぱぐれることはありません。社会が不安定になることもない。一般に社会が不安定化する要因の多くは若年層の人口が大きく膨らむユースバルジ(Youth Bulge)から生まれます。人口に占める15~29歳の比率が3割を超えるとユースバルジになるといわれています。

 若年層の人口が多すぎれば競争過多で仕事がなく、恋人とデートもできない、結婚もできないという若者が増えてしまいます。エネルギーと活力にあふれる若者がそういう閉塞状態に陥ると、希望をなくして、しまいにはテロや内戦にまで発展していきます。

 2014年には世界で年間4万人近くの人がテロで亡くなっていますが、その80%はイラク、ナイジェリア、パキスタン、アフガニスタン、シリアに集中しています。テロや内戦がイスラム教の問題だとか、宗教の戦いだというのは間違っています。いずれも原因はユースバルジです。

労働力が不足する日本は、実は若い人にとって天国

 西欧的な価値観からすれば受け入れ難いものだったとはいえ、過去、これらの国を統治していたタリバン政権、フセイン政権などの独裁政権は社会に一定の安定をもたらしていました。若者にはそれなりに仕事がありました。ところが、それらの政権が崩壊し、ユースバルジの問題が生じたことで、社会は不安定化してしまったのです。

 これらの国々と真逆で、労働力が不足する日本のような社会は実は若い人にとっては天国です。さらに湯加減もほど良く、伸びしろが山ほどあるのですから、皆さんには今、この時代、この環境にいることをメチャクチャ幸せだと思って仕事をしてほしいと思います。

 問題は、国際競争力26位という現在のこの位置づけをどうやって上げていくかです。

 「イノベーションを起こそう」「生産性を上げたい」と思うのなら、明日も今日と同じ仕事をやっていてはダメです。それでは26位のままで進歩はありません。今までとは違う仕事のやり方をしたり、人と違うことを考えたりしなければ、生産性は上がりません。今まで5時間かけていた仕事のプロセスの一部をカットして4時間で仕上げるというような変化、違いを生み出すことが必要です。