「『タテ・ヨコ思考』と『数字・ファクト・ロジック』という2つの方法論を使って考えれば、問題解決の糸口は見つかる」
「『タテ・ヨコ思考』と『数字・ファクト・ロジック』という2つの方法論を使って考えれば、問題解決の糸口は見つかる」

少子化対策、フランスにできることが日本ではできない?

 では実際にこのタテ・ヨコ思考と数字・ファクト・ロジックという2つの方法を使って現在の日本が抱える課題について考えてみましょう。

 今、わが国にとって最も深刻な問題は少子化です。安倍政権が「アベノミクス」第2ステージとして打ち出している「新3本の矢」でも「出生率1.8への回復」という目標が盛り込まれています。

 厚生労働省が先日発表した2015年の人口動態統計によると、1人の女性が生涯に生む子供数を推計した「合計特殊出生率」は1.46でした。目標とする1.8まで、0.3~0.4ポイント上げなくてはなりません。それには先進国で出生率を0.3~0.4上げた国を参考に政策を考えるのが一番です。

 ご存じの方も多いと思いますが、フランスは少子化対策によって約10年で出生率を0.3~0.4ポイント上げた実績を持っています(90年代半ばの1.6台から2000年代半ばの2.0台まで)。「フランスと日本ではお国柄が違う。日本の参考にはならない」と言う人もいますが、本当にフランスの政策は参考にならないのでしょうか。

 フランスが少子化対策として打ち出したのは「シラク3原則」と呼ばれる政策です。第1に子供を生んでも新たな経済的負担が生じないようにすること。第2に無料の保育所を完備すること。第3に育児休暇から職場復帰する際、元のランクで元の職場が受け入れること。これだけです。

それは「やる気がないだけ」

 男性は赤ちゃんを生むことはできません。そこでフランスでは男性が何を言おうと、赤ちゃんを生むことができる女性が、産みたいと思った時に産める体制を整えることに専心しました。産みたい時と女性の経済力は一致しないのが普通です。だからその差は税金で担保するという政策です。経済力のない18歳の女性が赤ちゃんを産んだ場合でも、必要な金額を給付することにより、「女性は産みたい時にいつでも、何人でも安心して赤ちゃんを産んでください」という姿勢を示したのです。

 一方で、出産後の女性は生活基盤を確立するために仕事を持つことが必要です。だからフランスは保育所を完備しました。この保育所が日本では不足しているため、待機児童の問題が発生しています。横浜市は待機児童ゼロを実現したと話題になりましたが、それも3年がかりとのこと。他の自治体では待機児童ゼロの実現は困難とされがちです。けれど、フランス人に言わせればそれは「やる気がないだけ」ということになります。

 考えてもみてください。日本の小学校で「教室が足りない」「先生がいない」という理由で児童の小学校への入学を待機させている自治体の話を、聞いたことがありますか。そんなことが起こったら大変です。義務教育でできていることは義務保育にすればできるはずだとフランス人は言うのです。

 育休から戻る人を元のランクで元の職場が受け入れるべきだという話をすると、「2年も休んだ社員を簡単には戻せませんよ」と言う人がいます。しかし多くの大手企業は社員を世界中の大学や大学院に留学させています。2年ほど勉強して帰国した後も喜んで元の職場で受け入れています。留学した社員を受け入れることはできるのに、社会の宝である赤ちゃんを生んだ女性を受け入れることができないというのは、果たして男女差別以外に何か理由があるのでしょうか。

「できちゃった婚」は世界のスタンダード

 中には、フランスでは赤ちゃんの6割近くが婚外子として生まれることを取り上げて、「フランスは自由恋愛の国で不倫が多いから赤ちゃんがいっぱい生まれるんだ」と言う人もいますが、不勉強もはなはだしい。

 社会学者の調査によれば、世界の中でいちばん不倫が多いのは日本だそうです。他の先進国では嫌いになったらすぐ離婚するので不倫をしているヒマがない。日本は「離婚すると上司の覚えが悪くなる」「世間体が悪い」などといった理由で仮面夫婦を続けてしまう。だから不倫が多いというのです。つまり、婚姻が歪んでいるから、不倫という歪みが生じるのです。

 そもそも、世界的に見れば、日本の婚姻の形態はガラパゴス的で、かなりゆがんでいます。日本では平均すると女性が29歳ぐらいで最初の結婚をして30歳ぐらいで第1子を生みます。先進7カ国(G7)の残りの6カ国では、例えば女性が第1子を産むのは26~27歳。最初の結婚は28歳ぐらいが普通です。

 若い男女が好き合ったら一緒に住むようになり、一緒に住んだら自然と赤ちゃんが生まれ、じゃあ身を固めようかと結婚する。これが人間の社会で歴史上行われてきた一般的な婚姻の姿です。結婚する前に赤ちゃんを生んだ女性のことを「ふしだらだ」とか「だらしない」などとアホなことを言うおじさん、おばさんがいる日本では、結婚と出産の順序が逆になっているのです。したがって、他の先進国で婚外子が多いのは不倫とは全く関係がないのです。

次ページ 介護負担を減らす究極の策は「定年廃止」