プラスチックのクレジットカードに代わる手段としては、生体認証の方向に進むのではないかという気が私はしています。(写真:陶山勉)

国際標準化こそが正しい終着点だが…

受講者:鉄道会社に勤めています。鉄道会社の運賃の支払いは今、電子マネーの割合がかなり増えています。ビザでもかつて日本で独自の電子マネーを手掛けたもののやめたという経緯があると聞いています。その理由と、電子マネーの将来をどう見ているかを教えてください。

岡本:確かにかつてビザは「ビザタッチ」という非接触決済サービスを日本で手掛けたことがあります。三菱UFJニコス社の決済サービス「スマートプラス」をベースにしたサービスでした。

 スマートプラスはiD、QUICKpayなどと同様に非接触IC技術にソニーの「フェリカ」を採用しています。しかし、このフェリカはセキュリティ鍵の関係でそれぞれの仕組みが独立していなければならないので国際的なデファクトスタンダードになりにくく、日本だけのガラパゴス規格でした。先ほどもお話しした通り、国際標準化こそが行き着くべき正しい終着点であり、日本国内だけで普及しているものはどこかの時点で終わると私は考えています。その意味で、ビザタッチにも先々の絵は描けないと見て、ある程度見切りがついた時点で撤退したというのが実情です。

 現在、ビザはJCB、 マスターカード、アメリカン・エキスプレスなどとともに、世界基準のセキュリティ技術であるEMVの認証技術をベースにした非接触サービスを提供しています。こちらは国際的な標準化が進み、どの国でも同じ基準でビザ(および他のブランドも)の非接触サービスを提供できるようになっています。非接触決済の普及が最も進んでいる国がオーストラリア。消費の6割がカード決済で、そのうちの8割ぐらいが非接触。つまり全体の5割近くが既に非接触決済になっています。国際標準化が進めば日本でも同様に非接触の割合は増えていくと思います。

 鉄道系の電子マネーの将来についてですが、実は「スイカ」や「パスモ」など鉄道系の非接触ICカードはみなフェリカの技術を共通して使用しています。したがって、日本独自の電子マネーです。

 ただし、先ほど国際標準こそ正しい終着点と考えていると言いましたが、鉄道系の電子マネーに限っては、当面、このままの状態が続くのではないかとみています。

 昔、駅員さんが改札で紙の切符をカチカチ切っていた時代から比べると、交通系ICカードの普及は鉄道会社に大きな合理化効果をもたらしました。キセル(乗車駅や降車駅の近くだけの切符を持ち、途中は切符なしで電車に乗る不正行為)も防げるようになりました、日々の現金の取り扱いも格段に減らせることもできました。鉄道会社にとっては極めて有用で合理化に大きく寄与した技術といえます。しかも普及率が非常に高い。

 既に日本国内では定着し広く普及していますから、たとえフェリカ利用の交通系ICカードが日本限定であっても、国際標準に切り替わるまでには相当な時間がかかると思います。個人的には、海外から来たお客様がスムーズに電車に乗り降りできるよう、いずれ何らかの形で国際標準のカードが交通サービスでも使えるようになるといいなとは思いますが。