「日本版アップルペイ」には限界がある

アップルペイの機能を搭載したiPhone7。米アップルが提供する決済サービス「アップルペイ」は2016年10月から、日本でも始まった。だが、フェリカのシステムをベースにした“日本版アップルペイ”は実質的に日本でしか使えない。(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

受講者:小売業に勤めています。当社でもクレジットカードを発行していて、数少ない有望事業とみて今後拡大しようと力を入れています。その中で、将来的には今のプラスチック製のカードはなくなるのではないか、スマートフォンなど携帯電話がそれに置き換わるのではないかなど、いろいろな議論が出ています。岡本さんは決済手段の形について、どう変わっていくとお考えか、お聞きかせいただければと思います。

岡本:アップルが「iPhone7」で決済可能な「アップルペイ」を昨年、始めましたね。これによって携帯での決済がもてはやされ、格段と普及するかのようにいわれています。しかし私は簡単にそうなるとは思っていません。

 実はアンドロイド系の携帯電話ではもう何年も前から同様のことのできる「おサイフケータイ」を搭載してきましたが、普及率はいちばん高かった時で全体の3割程度。そこからはどんどん落ちていって今では10%を切っています。どうしてかというと利便性に問題があるからです。これはスマホの問題ではなく、もともとの非接触のカード決済のインフラの問題です。

 日本では携帯電話で使える非接触決済にはSuica、iD、QUICPayなどがあります。しかし、いずれも相互の仕組みで使えるようにはできていません。店によって「iDは使えるけどQUICPayは使えない」といったことがあちこちで起きています。しかもどれも日本国内だけの仕組みで海外では使えないのです。もちろん逆に、海外から来た外国人もその仕組みを使うことができません。

 フェリカのシステムをベースにした“日本版アップルペイ”は実質的に日本でしか使えない”ガラパゴス“の仕組みの上にのっているのです。現状は回り道でいずれはやはり国際標準化した仕組みに収斂されていくのではないでしょうか。時間がかかるかとは思いますが。

 そもそも、消費者すべてが携帯電話にお財布の機能を移したいと思っているでしょうか。今、携帯をなくしたり、急に使えなくなったりしたら目の前真っ暗になりますよね。連絡先からスケジュールからメッセージから、あらゆるデータが入っていますから。そこに財布も一緒に入れちゃったらさらにどうにもならなくなります。果たしてそこまでやろうとするか。個人的には疑問に思います。

 もっと先の話になりますが、いずれ主流になる可能性があるのは生体認証ではないかと考えています。生体認証には、顔や、指紋、静脈、目の瞳の虹彩…などの形状を使った認証があり、実験的には既に行われています。あらかじめ登録した生体情報に基づき、その人が入店しただけでカード番号をひもづけることができます。

 将来的にはお店に入るとシステムが「岡本」と認識し、店員が「岡本様、いらっしゃいませ」と声をかけてくるようなことになるのかもしれません。さらには、そのお客がどういうステータスの会員なのか、どういう嗜好を持っているのかまでもとらえた上で接客をするようになるのかも…。

 現在の技術進歩のさらなる向上を受け(特にデータの圧縮と通信スピード/容量の向上)プラスチックのクレジットカードに代わる手段としてはスマホの先にあるのは、こういう生体認証の方向に進むのではないかという気が私はしています。