有田焼では「スプラッシュペインティング」をアイコンに

 アイコンとなるのは有形のものばかりではありません。無形なものでメソッド、方法論などもアイコンになると考えています。

 代表例が有田焼。2016年、有田焼は創業400周年を迎えましたが、それを記念し、また未来に向けて有田焼の魅力をもう一度発信しようと「ARITA 400 Project」が進行しました。僕は工業デザイナーの奥山清行さん、建築家の隈研吾さん、映画監督の北野武さんらとともにゲストクリエーターとして作品をつくることになりました。 

 有田焼は400年の間に様々な技術革新が起きて今にいたっています。400周年という機会に未来に向けて魅力を再発信するのであれば、今までの有田焼にないものを生み出したいと考えました。有田焼といえば、繊細で緻密な絵付けで世界的に評価されてきた陶器です。しかし、僕はあえてそれとは全く違う手法に挑戦したいと考え、「スプラッシュペインティング」という手法を活用することにしました。スプラッシュペインティングとは絵の具をつけた筆を空中で回して陶器に絵付けする手法です。筆は陶器に触れません。「筆跡のないドローイング」という方法です。このやり方で、有田焼の伝統である白地にブルーの絵付けをし、作品をつくっていきました。

 やってみてわかったのですが、陶器は乾いているので、筆をバサッと回して絵付けをすると、一瞬で絵の具を吸い込みます。写真を撮ったかのように、「その瞬間」が定着します。これが非常に面白かった。永遠と瞬間、伝統と革新、静と動、そういう相反するイメージを内包した作品で「DISSIMILAR~対比~」というシリーズとして様々な作品を制作しました。

 8社ほどの窯元とコラボレーションして作品をつくったのですが、有田焼の400年の歴史の中で、別の窯元から同じシリーズの作品を生み出すというのは初めてのことだそうです。方法論がアイコニックであるがゆえに、違う窯元の全く形の違うものであっても、1つのシリーズとして成り立った例になっています。

有田焼では「スプラッシュペインティング」という方法論をアイコンとして作品を生み出した

 幾つか仕事の事例を紹介してきました。

 このように僕はすべてのモノやコトをアイコンという視点でとらえ、ブランドコミュニケーション戦略を考えています。この一貫した方法論を「アイコニックブランディング」と呼んでいます。

 今の情報化社会で、新たに生み出すモノを覚えてもらうというのは大変なことです。ロゴから始まり、プロダクト、スペース、建築、街、方法論といったものを戦略的にアイコニックに構築していけば、見る人の記憶に残りやすくなるはずです。コミュニケーションの効率を上げる方法論の1つがアイコンだと信じて、仕事をしています。