山根節(やまね・たかし)
1973年早稲田大学政経学部卒業。74年トーマツ入社。80年慶応義塾大学大学院経営管理研究科(慶応ビジネス・スクール)を経て、82年にコンサルティング会社を設立して代表に就任。94年慶応ビジネス・スクール助教授、98年米スタンフォード大学ビジネススクール客員研究員を務める。99年商学博士を授与され、2001年教授に就任。2014年慶応ビジネス・スクールを退職し名誉教授に。同年早稲田大学ビジネススクール教授に就任。2016年早稲田大学ティーチング・アワード受賞。 (写真・陶山勉、以下同)

 慶応義塾大学大学院経営管理研究科(慶応ビジネス・スクール)が次世代の経営の担い手を育成すべく、エグゼクティブ向けに開設する「Executive MBA」。2018年度最初の経営者討論科目では慶応義塾大学の山根節名誉教授が「ビジネススクールを目一杯活かす学び方」と題する講義をした。

 経営者に必要なスキルのうち、ヒューマンスキルとクリエーティビティについて詳しく説明した。クリエーティビティは意思決定してこそ生まれる。意思決定とは「選ぶ」ことであり、「捨てる」こと。日本の経営者はこの「捨てる」を苦手とする。山根名誉教授はビジネススクールで多くのケーススタディーをこなし、「オレならこうする」と言い切り、反論に答えることが意思決定の訓練になると語る。

(取材・構成:小林佳代)

 ビジネスに必要なスキルは「コンセプチュアルスキル」「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」で、経営トップになるためには、これらに「クリエーティビティ」も加わると説明しました。コンセプチュアルスキルやテクニカルスキルは様々な場で学ぶことができると思います。ここでは、ヒューマンスキルとクリエーティビティをどう磨くのかを中心に説明していきます。

 ヒューマンスキルに重要な要素の1つが人脈です。人脈形成の方法を語る上で、格好の人間がいます。私の慶応ビジネス・スクールの同期生で、卒業後、起業し、上場を果たした男です。背が高くて図々しくて威勢が良い。ものすごく面白い人間です。彼はとにかく人脈をフル活用していました。慶応ビジネス・スクールの同期生の中でも、大企業に勤めていたエンジニアや人事担当者などを口説いて自分の会社に引っ張り込んだ。私も集客のための色々な手立てにずいぶん協力しました。

 7年間勤めたソニーの人脈も大いに使っていました。メンターとしていた役員に資金調達を頼み込み、その人は取引銀行の支店長を料亭に招いて、「コイツに資金をお願いします」と頭を下げてくれたと言います。おかげで彼はベンチャー企業が陥りがちな資金不足に悩むことなく事業を継続することができました。

 彼自身も人脈をものすごく大事にしていました。彼の口癖は「Give、Give、Give&Take」。こうしてビジネスネットワークを広げていました。

 ヒューマンスキルを磨くためには情報発信も大事です。私は慶応ビジネス・スクールにいる時、議論の際には必ず少し切り口の違う意見を言うことを心がけていました。そのおかげか、卒業後に勉強会を開く時には、「山根さんの意見を聞いてみたい」「山根さんを呼ぼう」と必ず声をかけてもらえました。

 情報発信に関しては、シリコンバレーで私は「エレベータープレゼンテーション」の重要性も学びました。エレベーター内でトップと一緒になったら、短い時間で「自分は何者か」「自分と付き合うとどんないいことがあるか」をスマートに売り込む。これはとても大事なことです。エレベーターに乗り合わせる時間は短いですから、10秒あったらどうするか、20秒、30秒あったらどうするかというのを考えて準備しておき、常にチャンスがきたらやるようにしてください。

取り入れたい「4割任用」

 ぜひ取り入れてほしいのが「4割任用」です。「4割任用」とはホンダの人事に浸透した仕組み。「その仕事に必要な能力を4割満たしていたら任せる」というものです。私は自分自身に「4割任用」することを心がけています。つまり、4割の能力があれば、新しい仕事に挑戦するのです。

 「山根さん、こういうことできる?」と聞かれたら、「時間をいただければできますよ。わりと得意です、その分野」という具合に答えて、後からたくさん調べたり、勉強したりする。こうやって周囲の期待に応えていくことで伸びていきます。

 メンターとメンティーを見つけることも重要です。「4人のメンターを見つけたら、あなたは大企業のトップ層になれる。4人のメンティーを育てたら、あなたは大企業のトップになれる」というのが米化粧品会社エイボンの韓国系CEOの言葉。4という数字にどういう根拠があるのかはわかりません。東洋的な発想で四天王のように4方向を固められるということでしょうか。でも4人メンターがいたら、確かにトップ層に引き上げられそうな気がします。ぜひ皆さんも組織の中で4人見つけて、Give、Give、Give&Takeしてください。