2万5000人の敵を前に手勢2000人でどんな軍略を描くか
2万5000人の敵を前に手勢2000人でどんな軍略を描くか

 経営理念の説明をする時、 私は「織田信長・桶狭間の戦い」をよく例に持ち出します今川義元の軍勢2万5000⼈を前に、織⽥信⻑は⼿勢2000⼈でどんな軍略を描いたでしょうか。普通の人がロジカルに考えれば、出てくる結論は「勝利は不可能。白旗を振り、なんとかネゴシエーションして好条件を引き出す」といったものでしょう。

 しかし信長の頭にはネゴなんて全くなかった。彼の理念はあくまでも「天下取り」だったからです。そこで一点突破の奇襲作戦をデザインし、歴史をつくりました。

 つまり、理念が戦略や戦術を決めるのです。「何がやりたいか」「何を成すべきか」という理念が決まらなければ設計図は描けません。

 私は仕事柄、経営トップとお会いする機会が多いのですが、「何がやりたいか」「何を成すべきと考えているか」と問いかけて、パッと明確な答えを返してくれるトップは少ない。何がやりたいかわからないトップほど、売上高やシェアの話を持ち出します。

トップに重要なのは「クリエーティビティ」

 ビジネススクールで学ぶ若いビジネスパーソンと話していると、みんなトップの言うことが腹落ちしていないと感じます。腹落ちしていなければ、進むべきベクトルに向かって協力したいとは思わないでしょう。これが、我が国の「失われた二十数年」の最大の原因になったと私は考えています。

 最近、「プロ経営者」という言葉が使われるようになりました。プロフェッショナルというのは、もともと西欧社会の三大職種であるプロフェッション(聖職者、医師、弁護士)に由来する言葉です。このプロフェッションの資格要件が「体系的理論の素養」「教育訓練により蓄積した経験値」「高邁な理念」の3つ。ミンツバーグは経営に必要な能力として「サイエンス」「クラフト」「アート」を挙げています。両者はぴったり符合します。

 ビジネスに必要なスキルは「コンセプチュアルスキル」「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」と言われます。地位が高い人ほどコンセプチュアルスキルの重要性が高く、地位が低い人は商品知識、業界ルール、基本的な営業方法といったテクニカルスキルの重要性が高くなります。ヒューマンスキルは地位に関係なく重要です。

 経営トップには、これらのスキルに加えて「クリエーティビティ」も必要だと考えます。つまりデザイン能力です。経営に必要な能力にアートがありましたが、アートを生み出すこのクリエーティビティを磨いておかないとトップになれないと感じています。