「アドバンテッジパートナーズが、『最も重要』と考えているのは投資理念です」

アドバンテッジパートナーズが定義する「企業価値」とは

 ここから企業価値を作り込むというテーマについて、説明していきます。

 「企業価値」というのは、わかりにくい概念です。「株式価値」と同じものと考える人もいれば、社会への貢献度合いのようなものを企業価値と呼ぶ人もいます。私自身は「企業の財務的な価値と、外部から認識される定性的な価値の合成関数」と定義しています。

 それぞれ分解して説明すると、財務的価値は「株主価値+有利子負債-現金」でとらえたり、「将来キャッシュフローを資本コストで割り引いた現在価値」でとらえたりします。またPBR(株価純資産倍率)、PER(株価収益率)、EBITDAマルチプル(EBITDA[金利・税金・償却前利益]の何倍の価値があるか)などの尺度で算出する方法もあります。

 一方の認識価値は企業が内外に認知される個性、アイデンティティーを指します。企業理念、明確なガバナンス体制、目標顧客への提供価値のわかりやすさ、組織の一体感、強固な株主との関係、経営トップのイメージ、従業員満足度…。投資家やビジネスコミュニティーにいる人は、このような項目によって、「あの会社は良い会社だ」「面白い会社だ」という評価をしているはずです。20年間の投資の中で、私はこうした“定性的”な項目が企業価値に大きな影響を与えることを実感しています。

コアの事業を明確にする、すると面白いように顧客が増える

 例えば目標顧客に対して、どのような製品やサービスを提供し、どのような価値を出しているのかが明確な会社と、長い歴史の中で様々な事業を手掛けて何が主たる事業かが見えにくくなっている会社とでは財務的価値にも違いが出ます。多様な事業を手掛ける「コングロマリット」の株式時価総額が、個々の事業の価値を合算した額に比べ割安になることを指す「コングロマリットディスカウント」という言葉もあるぐらいです。

 我々は投資先企業の中に入り込む時、真っ先にそこを確認します。目標とする顧客が明確ではなくあまり評価されていない事業があった場合には、そぎ落とし、コアの事業を明確にする。そうすると面白いように顧客が増え、提携の話が舞い込み、業績が上がっていくものなのです。

 皆さんも今一度、自分の会社や事業部のありようを改めて見てみるといいと思います。歴史が古く、規模が大きい立派な会社ほど、「わかりにくくなっているところはないか」「もし変えるとしたらどんなやり方があるか」という目で見ていただきたい。それだけでいろいろな経営改革のテーマが浮かび上がってくるはずです。

停滞していた企業を、成長局面に転じさせる

 アドバンテッジパートナーズがこれまでに投資した60件のうち40件は既に株式を売却済みです。残念ながら百発百中とはいかず、損失を出した案件もあります。それを含めても、全体として投資倍率は2倍を超えています。リターンの源泉の多くを占めるのは収益の成長。我々が責任株主として、経営陣、従業員といっしょに様々な施策に取り組んだ結果、利益を伸ばすことができた。我々がお預かりしたことで、それまで停滞していた企業を成長局面に転じさせることができたと考えられます。

 2015年までの、我々の投資先企業と上場企業全体の利益の変化を見ると、我々が投資した企業の利益の伸びの方が上場企業全体の利益の伸びを上回っています。これはおそらく他のプライベート・エクイティ・ファンド運営会社も同じでしょう。

 では上場企業とプライベート・エクイティ・ファンドが投資した企業とでは何が違うのか。私はコーポレートガバナンスのあり方に差があるのだと考えます。この点については、後ほどさらに詳しく説明していきましょう。