「海洋資源の枯渇を助長しているのでは」という疑問

 最後にヤマハ発の新興国における船外機ビジネスの課題について議論していきましょう。実は現時点でヤマハ発の新興国における船外機ビジネスは、中長期で見ると非常に深刻な問題に直面しています。何だと思いますか。

受講者:新興国で頑張り続けられる人材をずっと確保し続けられるのかという点に課題があると思います。

 なるほど。実はヤマハ発動機は日本でいちばん多く海外青年協力隊出身者を雇用している会社です。彼らは一般のビジネスパーソンならば嫌がりかねない新興国へも喜んで行くようです。今後もそういう新興国への興味の高い人材を、採用し続けていくことは大事ですね。

受講者:現地で社会的責任を負っているがために、ビジネスを止めたくても止められないというのは大きな問題ではないかと思います。

 仮に損失を出すようになったとしても、ビジネスを止められないのではないかと。無責任と思われたくはありませんからね。

受講者:収益力の向上は課題です。最初に現地市場で需要を創造する際には日本からの経営資源の投資が不可欠ですが、ある程度、需要をつくった後、いかに現地化を進めていけるかがカギになると思います。

 ヤマハ発は米ゼネラル・エレクトリック(GE)などと違って、船外機の場合は製品開発拠点を現地に置いていません。日本に一元的に集中する構造になっています。今後はマンパワーの問題からも現地化を進めていくべきでしょう。どこまで現地に委譲できるかは注目ですね。

受講者:新興国に船外機を提供し、現地の人たちの漁業効率を高めて暮らしを豊かにするのは一見、社会貢献のように思えます。しかし、一歩間違えると、海洋資源の枯渇を助長することになりかねません。これは大きな課題だと思います。

 その通りです。まさにヤマハ発が直面する深刻な問題の1つは資源問題です。今、漁業界では「捕る漁業」から「育てる漁業」へという構造的な変化が進行しています。海洋資源の枯渇が問題になっているからです。

 漁師たちが船外機を使って遠くまで出て行って、何日も旅をしながらこれまでにない量の魚をどんどん捕る。漁師の収入にとっては良いことです。しかし、その延長上には、船外機を売れば売るほど海洋資源が枯渇していくことになるのではないか──こういう疑問が生じてきます。

 育てる漁業である養殖に必要な船外機の馬力は、沖合へ出るものよりもぐっと小さくなります。場合によっては内燃機関ではなく、バッテリー駆動のエンジンで十分なケースもあるでしょう。そうなるとせっかく築き上げてきたヤマハ発の船外機ビジネスは縮小してしまいます。

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