個性重視、即実行、未来志向…独自の社風で挑戦

受講者:ヤマハ発の中期経営計画を見ると個性という言葉が何度も出てきます。人がやらないことをやることを良しとする社風があるからこそ、手付かずだった新興国市場に挑戦できたのだと思います。

受講者:過去には「即日実行主義」を唱えた社長がいます。現場の営業スタッフからの情報が本社に回り、製品の改良・改善に至るPDCA(計画・実行・評価・改善)が早いということに如実に現れています。

受講者:自然への意識の高い会社です。最初のピアノは木を使っていますし、船外機は海。自然を相手に、どう価値を生み出すかを考え、喜びにつなげている気がします。

受講者:常に未来志向で、超長期のスパンで考えているため、新興国での船外機事業のような時間がかかるビジネスにも腰を落ち着けて臨むことができたのだと思います。

 ヤマハ発の創業以来の理念、価値観、社風などが様々な形で新興国での船外機ビジネスに生きていることが見てとれますね。

 ここまで、ヤマハ発の船外機ビジネスについて、ミクロからマクロまで色々と議論しました。ここで出てきた要素をマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱する「7Sモデル」を使って整理すると、ヤマハ発の戦略が整合の取れたものか否かがわかります。

 「7S」を説明しておくと、真ん中にあるのが「シェアードバリュー」(価値観)です。そのまわりに「ストラクチャー」(組織)、「システム」(仕組み)、「ストラテジー」(戦略)、「スキル」(能力・ノウハウ)、「スタッフ」(人)、「スタイル」(経営スタイル・社風)があります。ストラクチャー、システム、ストラテジーは「ハードS」、スキル、スタッフ、スタイルは「ソフトS」と分類できます。

 この7つの要素はすべてがかみ合っていないといけません。7Sの間に何らかの不整合が起きていると、ビジネス全体が崩れてしまいます。ビジネスがうまく回っていない、エコノミックパフォーマンスが悪いという時には、この7つの要素の中に不整合が生じている可能性があり、そこを是正しなくてはいけません。

 ヤマハ発の場合は、社会の役に立ちたいという思いや新しい領域にどんどん飛び込んでいこうとする旺盛なチャレンジ精神が核の価値観として存在しています。

 その周辺を取り巻く要素として、ハードSでは海外市場開拓事業部の設置、「競合がまだ出て行っていない市場で先に需要をつかむ」という戦略、営業担当者や技術者が現地の要望に応じてさっと素早く動く仕組みがあります。

 ソフトSでは市場に取り憑かれてモチベーション高く仕事をする社員、その社員が現場体験から創り上げた高い値段の製品を売るノウハウ、進取の精神に富んだ風土がある。いずれもうまくかみ合い整合していることがわかります。

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