現地漁師の「生活の糧」、重大性が極めて高い製品に

受講者 緊急性がかなり違うと思います。新興国で船外機が故障してしまったら、それを使っている漁師は生活に困ります。

 確かに船外機が持つ意味が先進国(レジャー用)と新興国とでは全く違いますよね。新興国では生活の糧となっていて、重大性が極めて高い。もっとも安全性については、これは市場の別なく最重要であることに変わりありませんが。

 私はガーナ南部の町・エルミナの港へ取材に行ったことがありますが、沿岸漁業から帰ってきた漁師たちはみな50キロ、60キロもするような重い船外機を担いで家に持って帰っていました。船外機が盗まれてしまったら、その人の職業人生が断たれてしまいかねないから、ものすごく大切に扱っているのです。

受講者 これは想像なんですけれど、流通の仕組みが違って、先進国は新品での購入がほとんどだけど、新興国では中古で買うケースも多いのではないかと思います。

 セコハンも新品も両方ありと。そうですね。また新興国では、壊れた中古品でも部品源となり、最後の最後まで使い尽くされます。

 性能やエンジン技術上の違いで何か気づくところはありますか。

受講者 機能の違いがあると思います。先進国向けの製品は電子制御などの仕組みも搭載していて複雑だけれども、新興国向けの製品はシンプルな機能になっている印象です。

 先進国市場の船外機は電子制御の燃料噴射(PGM-FI)が当たり前のスペックとなっていますね。今はステアリング(操舵)と位置制御とエンジンを同期させるというようなソフトウエアさえ搭載したボートがあります。いかりを打たなくても、同じ場所に自動で位置制御できるというようなものです。ものすごく電子化が進んでいる。一方、新興国市場の船外機は極めて単純な構造になっています。これはなぜだと思いますか。

受講者 単純な構造だったら乗組員がある程度、自力で直せるけれど、複雑だったらムリです。漁船のトラブルは海の上で起きます。その場でなんとか対処できるようでないと、漁師が帰れなくなってしまって命にかかわるので、あえて単純な構造にしているのではないでしょうか。一方、富裕層が使うプレジャーボートの修理や補修はふだんからプロに任せています。オーナーが自分で直すということはないから、複雑でも構わないのだと思います。万が一故障しても、すぐに助けがやってくる。