新興国ビジネスの先駆け

 現在、ヤマハ発動機の船外機は、漁業人口が全体の1割を占めるガーナでシェア90%を握ります。実は、この90%というのも控えめに言った数字。ごくたまに、トライアルで他のメーカーのものが入ってくる程度で、事実上は独占状態のようです。サブサハラアフリカ市場全体では75%ほどのシェアになります。

 日本から営業担当者や技術者が年に1、2回現地を訪れ、船外機の補修や点検の講習を無料で行うなど、きめ細かなサービスを行っているのが人気の理由です。現地の漁師は船外機を使うことで岸沿いにはるか遠く漁業に出かけられるようになり、収入が増えて暮らしが豊かになったと大いに喜んでいるようです。

 ヤマハ発動機はアフリカ市場でゼロから出発し90%まで、シェアを積み上げてきました。今、多くの日本企業が注目している新興国ビジネスの先駆けとも言える事例です。では、ヤマハ発動機はそれをどうやって実現したのか。皆さんと議論しながら考察していきたいと思います。

 ヤマハ発動機がアフリカの新興国でどのように船外機のシェアを積み上げていったか、その背景を探るために、まず先進国市場と新興国市場の違いについてまとめていきましょう。

 よく知りたい対象があったら、そうでないものと比較するというのが1つの有効な方法です。例えば、営利企業の性質を知りたいと思う時には、非営利組織との違いを考えるといいでしょう。新興国市場における船外機ビジネスの性質を知るには、先進国市場における船外機ビジネスの性質と比べてみると理解が進みます。

 では、2つの市場にはどんな違いがあるか、意見を言ってみてください。なんでも結構です。

受講者  まず、船外機の使用目的が違うと思います。先進国の場合は娯楽、レジャー用と一部業務用ですが、新興国では圧倒的に業務用です。

 新興国では漁師が船に乗って魚を捕るために使いますね。沿岸漁業用です。

受講者  用途が違うことも関係しますが、船外機の馬力が違います。先進国の方が高馬力。新興国の船外機にはそれほどの馬力は必要としません。

 プレジャー用だと100馬力とか、場合によって250馬力なんていうものもありますね。新興国の沿岸漁業用なら10~30馬力ぐらいです。確かにかなり違います。

受講者 今の話からすると、船の大きさも違うと思います。先進国は大きく、新興国は小さい。そうすると価格帯も変わってきます。

 100~250馬力だと100万~200万円というところです。10~30馬力なら30万円、50万円というレベルでしょう。