大きなことを言う経営者は要注意

受講者:「転廃業マニュアル」の中には、気をつけるべき経営者の言動についても記述があるというお話がありました。例えば経営が悪化し始めると、経営者の言動はどのように変わってくるのでしょうか。今後の参考として、具体的なエピソードなどをお聞かせいただければと思います。

中西:色々あるのですが、例えば、絵空事のようなことを言うことでしょうか。「この商品が売れたらこうなる」とか、やけに大きなことを言うようになる。有名人の名前を出して「誰々が認めてくれた」とか、「大きなお金が入る」と主張する人。あるいは、まことしやかに「債権がある」と言う人もいますね。成功体験をずっとしゃべっている人などもいます。こういう話が出てくると、「ちょっと地に足が着いていないかな」と感じます。

経営者が「絵空事」のようなことを言い始めたら要注意(写真:rido/123RF)写真はイメージです

受講者:転廃業支援の中で一番難しいのは、債務者に対して事業承継の難しさに気付かせることではないかと思います。そういう気付きを与えるような人材をどのように育てていらっしゃるのでしょうか。必要な能力やスキルはどう教育しているのか。その辺りを教えてください。

中西:おっしゃる通り、経営者にその会社の先がないこと、経営者自身に十分な能力がないことを気づかせるということは簡単なことではありません。なかなか言いにくい話でもありますからね。

 そのため、日頃から経営者と対等な話ができるような人材を育てることが重要です。銀行員というのは、強い者に弱く、弱い者に強いというところがある。そうするとなかなか信用されません。正義の味方は逆でなくてはいけない。弱い者にも気を配る。強い者にも負けずにしっかり対応する。こういった人材を育てる必要があります。

 研修などで、私が言っていることは、「勇気を出して、しっかり正しいことを言いなさい」ということ。1回だけだと単なる無鉄砲になってしまうため、繰り返し言うことが大切なのですが、そのためにも「バックボーンを持ちなさい」と話しています。「バックボーン」とは、哲学でも思想でも宗教でもいいですし、音楽や美術のような芸術でも構いません。本を読んだり経験を積んだりしながらそれらを学び、自分のバックボーンとすることです。そういう心の拠り所をしっかり持っていると、ブレない姿勢が養われ「彼が言うことはいつも同じだ」と信じてもらえる。それが一番重要なことだと思います。