地域住民のコミュニケーションの場であるからこそ

 法的整理を活用した廃業支援の事例がスポーツ施設のC社。C社はボーリングがブームとなった時に事業を拡大し、ボーリング場5店を所有していましたが、消費者の嗜好の変化、競合企業の進出などで集客力が低下。徐々に資金繰りが厳しくなっていきました。黒字だった3店を残しながら法的整理を行い廃業を支援することを決めました。

 C社は兄弟で経営していた会社で、兄弟が黒字3店でマネジャーをやりながら生計を立てていました。引き続き兄弟の生計が立てられるようにしながら従業員の雇用も維持したい。さらに地域住民の貴重なコミュニケーションの場であることも考慮し、可能な限り店を存続させようと考えました。黒字3店を3社へ売却。赤字2店は建物や設備などを含めて賃借人に売却しました。その後、C社は破産の手続を行いました。

そのボーリング場は、地域住民のコミュニケーションの場となっていた。(写真:PIXTA)※ 写真はイメージです
そのボーリング場は、地域住民のコミュニケーションの場となっていた。(写真:PIXTA)※ 写真はイメージです

 民事再生を活用し自主廃業を支援した事例もあります。設立70年の電材卸業D社のケースです。約30人の従業員を何とか守りたかったこと、我々もお世話になってきた会社であったので、なんとか倒産に追い込まれる前に廃業ができるように支援しました。

 この事例では大変優秀な弁護士さんがつき、民事再生の手続の間も事業を続けて在庫のほとんどを正当な値段で売却することができ、円滑に廃業に持って行くことができました。

大幅な減産を取引先から通告された企業の廃業を支援

 大手自動車メーカー系列の下請け企業で、塗装用のマスキングテープをつくるE社に対しても自主廃業を支援しました。この事例は私自身も特に印象に残っています。

 売り上げの7割を占める主力製品の大幅な減産を、取引先から突然通告された経営者は、残る3割でなんとか経営を立て直そうと、当行に「減産資金の7000万円を貸してもらいたい」という相談をしてきました。

 旧知の会社だったため、「7000万円を融資するべきか」という相談は私のところにも上がってきました。その時に指示した主旨は、「7000万円融資することを前提にして、話をしっかり聞いてほしい。ただし廃業も1つの手段であることをE社の経営者に伝えてほしい」ということでした。翌日、経営者から「廃業を決断したので、手伝ってほしい」と連絡がきました。

 その後、我々は毎日の資金繰り計画表を作成。資金がショートしないように配慮した上で機械や土地などの資産を売却するスキームをつくりました。地域の製紙会社などに工場を売却できたことから、無事に負債を完済。経営者の資産の一部は処分しましたが、自宅や金融資産の一部を守ることができました。

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