患者の医療リテラシーを高めることがカギ

受講者:製薬メーカーに勤めています。医療現場を見て、医者が考えていること、患者が考えていることの間には相当な差があると感じます。身近なことでいえば、医療処置に対して患者がどれぐらい痛みを感じているか。医者が考えているレベルと実際に患者が感じているレベルには差があるということが、多くの論文からも明らかになっています。このギャップを埋めたいと私は思っています。13年間にわたって医療データを真摯にコツコツ積み上げてきた岩崎社長はどこにギャップ解消のチャンスがあると見ているのか。ぜひお聞きしたいと思います。

岩崎:患者とドクターの深い信頼関係は、なかなか築けるものではないですよね。むしろお互い、牽制し合うような仲になってしまいがちです。例えば、ご質問の中にあった痛みの問題に関していえば、今までのドクターとの関係性の中だと、患者は「みんな痛いだろうから少し我慢しなきゃ」と思ってしまいがちで、ドクターには何も言えない。特に日本人は我慢してしまう傾向があります。

 その関係を変えるには、ドクター側ではなく患者側の医療リテラシーを高めることがカギだと思います。その手段の1つがカルテを患者に返すこと。患者は自分のカルテを手にして初めて病気を正面から考えることができるからです。

 私たちが提供を始めた「CADA-BOX」というソリューションには診療情報が見られる「カルテコ」というインターネットサイトがあります。このサイトの周辺に「めでぃログ」という自身の健康情報が閲覧できるポータルサイトを開設しています。ある病気になった患者はカルテコとめでぃログでその病気についての治療、処置、処方を知り、その情報を基にドクターと話ができるようになります。

 患者は自分の病気のことに関しては、大いに関心を持ち熱心に調べるものです。素人ではあるけれど、場合によっては、ドクターよりも知識が深くなる部分もあるかもしれません。同じ病気の患者の情報を入手し、例えば無痛の処置・処方の方法があるとわかれば「今の処置は痛すぎるから無痛の処置を試してみたい」といった話ができます。

 医療のエビデンスが確認できるサイトがあることがすごく大事で、その第1段階として私たちは患者にカルテを返すことを始めたところです。

「どこに向かっているのか」という方向性だけは外さない

受講者:私は製造業の中でICTを活用した新規ビジネス企画に取り組んでいます。岩崎社長のプロジェクトを画像化するという方法に、とても興味を持ちました。私たちも計画の「ビッグピクチャー」をメンバーみんなで共有し、方向性を合わせて活動したいと考えていますが、実際には同じ絵を見ながらもメンバーによって違うことを考えていたり、フェーズが進む中で違う絵に変化してしまったりということが起きがちです。メンバー共通のアクションを導き出すコツ、ポイントがありましたらぜひ教えていただきたいです。

岩崎:具体的な獲得目標を共有するというのは、すごく大事だと思います。それも目先のことではなく、ずっと先の大きいことで。私たちもやっている途中で絵が変わっていくケースもあります。ただ、どこに向かっているかという方向性だけは外さない。

 とはいえ、当社でも気付いたら、当初予定とは全然違う商品が作られているということもありますよ。それはどこでも起き得ることだと思います。そういうことが起きた時に大事なのは、「やっぱりうまくいかない」と計画を中止してしまうのではなく続けること。もう一度原点に立ち返って、みんなで同じ画像を見ること。これを繰り返すと、時間はかかっても徐々に浸透してくるのだと思います。結構、根気が必要です。

経営者は「資金を集める必勝パターン」を持つべし

受講者:「一点突破、全面展開」というキーワードを教えていただきましたが、具体的なエピソードがありましたらぜひ教えてください。

岩崎:企業の血液は資金。やはり資金がないと先に進めません。日常的に問題は色々と起きましたが、やはり一番大変だったのはお金の問題です。そこに自信が持てると、ほかの問題はたいしたことではないと思えました。

 そういう意味で経営者は「お金を集めるための必勝パターン」を持っていることが重要だと思います。「コネがある」とかそういうことではなく、「このスタイルで投資家を魅了して投資してもらう」というイメージを明確に持っていること。私の場合はそれが画像化するという方法でした。この一点だけ突破できれば、あとは乗り越えられると思うのです。