「世の中になくて、これから欲しくなるもの」をつくる

 モノについては、とにかく「今、世の中になくて、これから欲しくなるもの」をつくることだけを考えました。「今、既にあるけれど、こっちの方が少し便利」という程度のものはベンチャー企業には向きません。それらは、大手企業が大資本を投じ、大がかりに宣伝して稼ぐタイプの商材だと思います。

 今は世の中になくて、人が欲しくなるものをつくるという話をすると、「お金がないから無理だ」とつくれない理由をたくさん言い始める人がいます。けれども、このつくれない理由を全部なくすことこそが大事です。「できない」「難しい」と思ったことを「どうすればできるのか」「何かやり方はないか」と考えたら、意外に答えはたくさんあります。社会通念や一般常識を捨てて想像する。「これがいい」と思うことを、ただひたすら貫くことが、ものづくりの本質だと思います。

 商品やサービスを新たに開発する時には、アンケートやヒアリングを行い、顧客の声を集めることがよくあります。でも私は全くしたことがありません。ものづくりは「顧客満足」から「顧客誘導」へと移行しないとダメだと私は思っているからです。

 顧客誘導のポイントは“顧客の顧客”を喜ばせることだと思っています。メディカル・データ・ビジョンでいえば、病院の顧客である患者さんです。患者さんにプラスとなる商品やサービスを我々の顧客である病院に提供する。それによって患者さんがその病院に行くようになれば、顧客である病院にメリットが出ます。こうなると必ずその商品やサービスは普及します。顧客の顧客が豊かになれば、顧客も豊かになるという発想です。

私たちが値引きしない理由

 私たちは、「割引して欲しい」と言われても、値引きをしない主義です。

 これには理由があります。最初に我々のパッケージソフトを導入してくれた、ある病院の存在です。アポイントをいただいて初めて訪問し、商品をパワーポイントで説明している時、途中で先方の事務長が「この商品は最高だ。すぐ持ってきてくれ」とおっしゃったのです。価格もまだ伝えてない段階で、です。事務長は「価格の問題ではない。これからの病院経営にこのソフトは絶対必要だ」と言ってくださった。そして本当に買ってくださいました。

 我々のソフトを誰も導入していない時に、こんなに高く評価をして下さった人がいる。それなのに、もし割引いてしまったら、最初に買ってくださったその事務長に顔向けができません。以来、僕たちは「ワンプライス」と決めてずっとやってきています。

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