MRは訪問すべき診療科すら把握するのが難しかった

 では、この医療ビッグデータは具体的にどのような利活用が可能なのでしょうか。

 今は変わってきていますが、製薬関係の企業が持っているのは商品の物流データだけということが多かった。つまり、「ある疾患に使われている薬をこれぐらい出荷した」という動きを把握するまでだったのです。私たちが持っている医療データは実臨床データですから、患者への薬剤処方実態が見えてきます。これは大きな差です。

 私たちからすると、ある薬が、どの診療科で使われているのかを示す「診療科別データ」は「いろはの『い』」といえる基本的なデータです。ところが、製薬メーカーはそのいろはの「い」である診療科別データすら把握できない状況でした。

 製薬メーカーの担当者に薬の診療科別の使用比率を示すと、「どうしてこの薬がこの診療科で使われているんだろう」と不思議そうな顔をされることがあります。つまり製薬メーカーはその薬がどの科でどのように使われているのかも把握するのが難しかったということです。MR(医療情報担当者)を配置すべき、より適切な診療科が他にあったかもしれないのです。実際、いちばん営業すべき診療科にMRが行っていない製薬メーカーもありました。これはちょっと衝撃的でした。今では、診療科別の情報だけではなく、メーカーのニーズに対応した様々なデータ分析をしています。

医療ビッグデータの分析により、薬剤処方の実際を浮き彫りにする

 例えば、Aという抗がん剤のデータを見ると、2014年3月まではほとんど腎がんに使われていましたが、翌4月から急に乳がんに使われるようになったことが分かります。我々のデータからこの事実を掴むことで、乳がんを扱うドクターの元にMRが行って、的確に情報を提供できます。

 また、副作用の可能性を探ることも可能です。B剤という薬を投与後、60~79歳の男性患者の間でCという疾患が多く出ているというデータが出ているということがわかれば、製薬メーカーは高齢男性への処方について注意喚起を図ることも1つの活動として考えられます。

 私たちのシステムによって今、このように医療用データは多様な利活用が可能になっています。当初、思い描いたビジネスモデルの通りにコツコツやってきたことで、こうした成果を得ることができたのです。