設立から5年数カ月の間、毎月赤字だった

 早速、病院経営分析システムを開発し、病院に販売していきました。販売後はパッケージソフトを使う病院を対象にユーザー会を設置し、活用事例を全ユーザーに周知するなど、きめ細かなユーザーサポートを実行しました。

 メディカル・データ・ビジョンは設立から5年数カ月の間、毎月赤字でした。資本金1500万円で設立した会社ですが、5年たった時、累積損失は9億円にも達していました。ユーザー会をつくったのは、まさに赤字を垂れ流しているまっただ中のこと。ユーザー数自体、まだ十数院しかありませんでした。

 知人の医療系企業の社長からは「もったいないからユーザー会なんてつくらず、1病院ずつ訪ねて回ればいいじゃないか」と言われました。もっともなことです。けれども私たちは病院から信頼を得るための戦略としてユーザー会の活動を続けました。

 「えむでぶ倶楽部ニュース」という新聞も配信しました。ユーザーの病院を訪ね、実際に現場でどのようにシステムを活用して成果を出したのかを取材して載せるのです。

 「○○病院でソフトを導入しました」と伝える程度では他のユーザーには全く響きません。「○○病院の□□科の△△さんがソフトを入れてこういう活動をしたらこのように変わりました」というところまで伝える。それも私たちのパッケージソフトの画面写真を添えるなどして、それを見た病院が誰でも実践できるように配慮して活用事例を紹介しました。

 このプロセスの中で、病院の担当者の話を聞くなどのコミュニケーションを取るうちに、メディカル・データ・ビジョンという会社に愛着を持ち、身近に感じ、そして信頼してくれるようになったのです。

赤字の中でもサポートを徹底し、ユーザーとのパイプは強固に

 システムの使い方を伝える教育ソフトウエア「教えてシロー先生!」もつくりました。病院には当然ながら異動があり、担当者がすぐに変わってしまいまうこともしばしばです。前職は水道局の職員だったという人がいきなり病院の経営に携わったりもします。そこで、新しく担当に就いた人でも自ら使い方を学べるように教育ソフトをウェブに掲載し、無料でダウンロードできるようにしました。現在もこのソフトの利用率は高く、ほぼすべてのユーザーが活用しています。

 このように顧客である病院から、ある程度の信頼を得られるようになった段階で、地域別勉強会を開催するようになりました。地域別勉強会は2009年から2016年までに累計244回行っています。

 地域別勉強会に参加するユーザーは、自分の病院のデータを持ってきます。勉強会ではその場限りで他の病院の状況を見られるようにしておき、その上で各ユーザーの活用事例を話してもらいます。自分たちの病院の状況と似たユーザーがいた時には、そこが取り組んだ活動内容をプリントアウトして持ち帰ることができ、自分たちの病院経営にすぐに生かせるという仕掛けです。

 このような活動を続けてきた結果、年に2回開く総会では、250もの席を準備しても、告知の翌日には満席になってしまうようになりました。次の日からは「どうしても参加したい」「席をなんとか確保してくれ」というご要望の電話が鳴り続けます。それほど私たちメディカル・データ・ビジョンとユーザーとのパイプは非常に太くなっているということです。