ようやく、ミッションであったリストラをやり遂げた時、また上司から電話があり、「最初に時間をかけたのは正解だったようだね。おめでとう」と言われ、すごく嬉しかったですね。

 この時、社員から信用を勝ち取るリーダーとなるためには、ひざを突き合わせて何度も議論をすること、何でも包み隠さずオープンに話し合うこと、そして、最終的にはエッジをきかせて決断し行動することが重要であるということを身をもって経験したように思います。

中途半端で終わるより1つの分野に賭けてみる

 その後、東芝との合弁会社でGE東芝シリコーンの社長に就任し、日本での新しい事業戦略を構築しました。

 日本の景気は低迷し、産業は空洞化しています。日本での事業展開は非常に厳しい情勢でした。けれど、日本ならではの強みもあるはず。どこに賭けるべきかを社員と議論し、最終的にマイクロエレクトロニクス分野に特化するという結論を導き出しました。

 ちょうど携帯電話、フラット画面のテレビ、デジタルカメラなどが普及し始めた時期です。それらに関連するようなエレクトロニクス分野は、日本市場でまだ需要が多く事業も拡大できると判断したのです。

 シリコンは建築にも自動車にも家電にも使われる素材です。社内にはこれまで建築用のシリコンビジネス一筋で仕事をしていた担当者もいますが、日本での事業構造を変革し、建築用、自動車用のシリコンビジネスのマーケティング機能は中国に移管することを決めました。

 もちろん、一部の社員からは大ブーイングを浴びました。けれど、それぐらいの変革を遂げなくては我々の存在自体が危うくなりかねません。中途半端に続けることはできないと説得しました。

 こうしてマイクロエレクトロニクス分野に集中したところ、新製品開発も進み、事業が上り調子になっていきました。超精密分野ですから、付加価値も高いという特徴があります。量的にはそれほど成長しないものの、利益率はどんどん上がっていきました。

 ある時、海外にいた上司から電話がかかってきて、「量の成長性が高いのは中国だが、利益の成長性が高いのは日本だね」と言われました。このメッセージを社員全員に伝えたらみんなとても喜んでくれました。みんなで日本でのビジネスにプレゼンスをつくり上げたというのがさらなるモチベーションにつながり、社内は一層、活性化されました。

 世界からも注目を集め、欧米のチームから「何をやったのか教えて」と問い合わせがくるほどになりました。日本に新たにグローバルのR&Dセンターをつくったり、工場に大きな投資を行ったりもして、会社そのものが生まれ変わったかのようになりました。プライドや喜びにあふれる社員を見るのはとても楽しかったですね。

 ある分野に特化するというのは、実のところ非常に勇気のいる決断でした。当然、特化することでリスクも生まれます。けれど中途半端で終わるよりは徹底的に1つに賭けてみようとみんなで選択し、それをビジョンと情熱を持ってみんなでやり遂げました。この決断と実行が成功のカギだったのだろうと思います。

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