その時、私は“純和風営業スタイル”に徹しました。「おっしゃる通りです」「もっともです」と、先方の話を全部聞き入れていたのです。

 購買担当の社員は思いの丈を洗いざらいぶちまけ、いすに座ったら少し落ち着いた様子でした。もしかしたら怒鳴りすぎて疲れたのかもしれません。

 すかさず私が話を始めました。「お客様のおっしゃることはもっともです。しかし私もサラリーマンですから、このまま帰るわけにもいきません。ここはひとつ、なんとかしていただけないでしょうか……」。

 相手の情に訴える、全く日本的な交渉です。普通なら通用しないところかもしれませんが、先方も怒鳴り疲れていたせいか、ずっと話を聞いてくれました。そして、私が色々と説明しているうちに、面倒になったのか、「ああ、もう分かったよ。じゃあ半分だけ値上げをのむよ」と言ってくれたのです。嬉しかったですね。びっくりしたのは隣に座っている部下です。「なんで、あれで半分値上げをのんでもらえるの?」と半信半疑だったようです。

話し合い、大リストラの理解を得た

 この件で、私は米国にいても自分は日本人であり、自分がやってきた強みを生かし、それが通じるようなスタイルを心がけるのがいいということを実感しました。以来、「Be yourself」という言葉を自分に言い聞かせるようにしています。今も一番好きな言葉です。

 その後、日本に帰国し、日本ジーイープラスチックスの社長に就任しました。それまで、ずっと外国人が社長に就いていた会社に日本人が初めて昇格したというということで、日本人社員たちは「言葉が通じ、カルチャーが分かる仲間が社長になってくれた」ととても喜んでくれました。

 ところが社長になった初日、私に米国の上司から与えられたミッションはリストラでした。取引先が製造機能をどんどん中国や東南アジアに移管していた時期で、日本でのビジネスも縮小せざるを得なくなっていたのです。

 スタッフからは大ブーイングです。「せっかく自分たちの仲間が社長になったと喜んでいたのに、いきなりこれか!」「いっそ外国人社長の方がましだった」と言われました。とてもつらい思いをしました。とはいえ、環境が環境ですから、リストラをせざるを得ないことは社員もみな分かっていたのです。

 時間をかけ、何度もひざを突き合わせて話し合いました。その途中で米国の上司からは「何をやっているんだ。1カ月たっているのにまだリストラしていないのか。遅すぎる」とせっつかれました。

 その時には私も抵抗して、「こういうことは最初が肝心。スタッフが納得をしなくては物事はうまく運ばない。少し時間をかけさせてほしい。必ずやり遂げるから」と説明し、何とか受け入れてもらいました。

 その後も社員とは徹底的に議論をし合い、最終的にはみんな大リストラを決行しなくてはいけないということを理解してくれました。

 一度方針が決まったら、日本のチームの実行力は世界1です。そこからはすごくスムーズに物事が進み、目標としていたリストラの人数を達成しつつ、「残すべき人材」は維持することができました。

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