社員へのねぎらいはすぐに形にすること

受講者:お客様満足度を向上し、お客様の期待に応えるため、山田さんは社員に、あえて高い要求をしてきた面もあるように感じます。東日本大震災後、翌月の4月末には携帯電話を復旧させたというのもその1つの例かと思います。高い目標を掲げて「頑張れ」とハッパをかけ、実際に達成できたわけですが、そのように成果を出したチームやメンバーに対しては、山田さんはどのように報いてきたのでしょうか。目標達成後も、活力を維持してもらうために心がけていることや、具体的に役立った方法があれば教えてください。

山田:実行してもらったこと、頑張ってくれたことに対するお礼や感謝の気持ちは形にして表しています。これは非常に大切なことだと思います。震災後、いち早く復旧してくれた東北にいる社員や関係者の方々には、直接足を運んで感謝の言葉を伝えました。色々な慰労会もやりましたよ。

 お礼や感謝の気持ちを形にした事例を1つご紹介しましょう。私が社長になってつくった中期計画に「2年後にお客様満足度調査でナンバーワンをとる」と宣言しました。これも東日本大震災の対応の時のように、「無茶ぶり」だったかもしれませんが、とにかくみんなには頑張ってもらいました。

 お客様満足度調査の発表は11月上旬にあります。私は11月になるずっと前から、ナンバーワンを取れた時には、みんなに「ありがとう」と記念品を配りたいと考えていました。ドコモには社員が2万人以上います。ショップのスタッフを加えたら5万人を超えます。記念品を5万個つくろうと思ったら1カ月ではできない。だから、数カ月前から仕込みました。有名ブランドの写真立てを発注しておいたのです。

 「ナンバーワンが取れなかったらどうするんですか」「大量の記念品がムダになるのでは」と聞かれたけど、「取れなかったら12月にプレゼントで配ればいいじゃないか」と言いました(笑)。幸い、11月の発表でナンバーワンが取れたので、すぐに用意していたプレゼントを配りました。ショップのスタッフの皆さんにも全員。これはとても喜んでもらえたと思います。

 皆さんもぜひお礼や感謝の気持ちは形にしてください。大事なのはすぐにやることです。ある程度、リスクを負ったとしてもです。

「お客様満足度調査」ナンバーワンを取ったことへの感謝のしるしとして、従業員に記念品を贈った。※写真はイメージです(写真:halfpoint/123RF)
「お客様満足度調査」ナンバーワンを取ったことへの感謝のしるしとして、従業員に記念品を贈った。※写真はイメージです(写真:halfpoint/123RF)

受講者:山田さんが唱える「現場原点主義」というのは、現場が「できない」という、「言い訳」を封じる狙いもあるように思いますが、いかがでしょうか。

山田:私はそんなに性格は悪くないんですよ(笑)。まあしかし、現場の人と一体になっていると、現場の人が「こんなことはできません」と言ったら、「じゃあ一緒に考えましょう」という雰囲気はできますよね。結果的に現場の人の言い訳を封じているのかもしれません。もちろん、それは悪気があって言っているのではないのですが。

 日本ではきっと、性善説でやった方が会社の運営はうまくいきます。そういう歴史や文化的な背景がありますし知識や経験などもある人が多いですから。あとは自分の会社を愛してくれる人をどれだけ多くつくるかですね。

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