管理者の仕事の1/3は部下の育成

 リーダーの大事な仕事の1つが部下の育成であることも忘れてはなりません。管理職の仕事の3分の1は、部下の育成だと認識すべきです。少し前までは2分の1と言っていたのですが、管理職の仕事が増えてきているので3分の1にしました。どんなに忙しくても、部下を育てることは自分の仕事だと考えること。最近、管理職にその認識が薄れているような気がします。

世の中にデッドエンドはない

 若い人にぜひ言ってあげたいのが「世の中にデッドエンドはない」ということです。デッドエンドとは「行き止まり」、「袋小路」のこと。いろいろと工夫して一生懸命頑張ってきたのに、ある時にはデッドエンドになったとしか思えないこともあります。けれど、時間は周りの環境を変化させます。1日たち、2日たち、1週間たったら、周りの環境が少しずつ変わってきます。一時はデッドエンドだと思っていた状況にも、かすかに光が見えてきます。極端なことを言えば、その瞬間がデッドエンドだと思ったら、家に帰って寝ていてもいい。悪あがきしてもろくなことはありません。1日、2日たったら良い解決策が出てくる可能性は高い。必ず解決の糸口が見つかります。

「世の中にデッドエンド(行き止まり)はない」ということを、若い人に言ってあげたい。(写真:arcady31/123RF)
「世の中にデッドエンド(行き止まり)はない」ということを、若い人に言ってあげたい。(写真:arcady31/123RF)

リーダーは常に明るく活気を持っている事が必要

 リーダーに必須の条件は常に明るく活気を持っていることだと私は思います。これも訓練でなんとかなるものです。当然、体調が悪い時もあれば、風邪をひいていたり、家族と喧嘩して気分が悪かったりする時もあるでしょう。それでも、会社に来たらニッコリ笑って大きな声で「おはよう」と言わなくてはいけない。部下は上司を見ています。自分が思う1.5倍ぐらい見られていると思った方がいい。リーダーが元気ならば、その課、部、会社が元気になります。

「前に進むしかない」状況をつくる

 時には「背水の陣」を敷いてみることも必要です。引くに引けない逃げ場のない状況をつくって施策を実行するのです。前に進むしか道がなければ、施策の推進につながります。

 ドコモはスペインで開催されるモバイルの展示会「Mobile World Congress」に毎年出展しています。私が社長の時、翻訳電話というのを展示したことがあります。携帯電話で日本語を話すと、その内容がネットワーク上で外国語に翻訳されて相手に伝わり、相手が外国語で話すと、その内容が日本語に翻訳されるというものです。その展示は非常に好評だったので、次に「いつ実用化されるのか」と聞かれました。説明要員の研究者は「2~3年先に実用化したいと思っています」と答えました。

 しかし、研究者の常として、次年度に同じ事を聞かれても2~3年先と言う事が多いものです。そこで私は背水の陣を敷こうと考え、取材に来た記者さんに、「今年の秋に実用化します」と明言しました。記者さんが「新聞に書いていいですか」と聞くから、「どうぞ書いてください」と言いました。そのことを研究所長に話したら、研究所は大騒ぎです。もう逃げ道がない。メディアに出てしまうのであれば、なんとしても実用化するしかありません。

 その後、私が研究所に頼んだのは、500社ぐらいの会社を選び、通信料を含めて無料で使ってもらって、その結果をフィードバックしてもらえばどうかという事でした。実際、多くの方に使ってもらうと、翻訳のバグがかなり出てきた。また、無料で使ってもらっていたことから、「こういう風に直したらどうですか」という建設的な意見を色々ともらい、プロジェクトの進行に大いに役立ちました。こういう大胆な背水の陣を敷くことも、時には有効です。一番いいのはマスコミに言うことかもしれません。「マスコミに発表した」となれば、やるしかなくなります。