【衆知の結集】 会議に参加する人の立場を「一人称」にする

 第3に挙げたのは「衆知の結集」です。1人の知恵と力は限られています。多くの人間が色々な角度から考えることが思考を深めることにつながります。いかに多くの人間の知恵と力を結集するかで、大事を成せるか否かが決まります。

 皆さんの会社の多くもそうでしょうけれど、ドコモでは従来、会社の意思決定は経営会議を開いて行っていました。多くの場合、重要案件は担当部長、担当取締役、担当副社長らが議論し、練り上げて社長に事前説明し、「よし、これで行こう」と固めてから経営会議にかけます。経営会議に出ている人は、ブラッシュアップされた案件だとわかっていますから、担当でもないのに「それはおかしい」などと意見することはありません。せいぜい「それはどういうことですか」と質問する程度。案件に対する立場が三人称のままで話が進んでしまいます。そうではなく、会議に参加する人たちの立場を一人称にしていかなくてはいけません。

 そこで、ドコモでは「朝会」を実施しました。重要案件を常務以上10人の役員が積極的に議論するようにしたのです。大切なのは、トップが個別の案件について事前に説明を受けないこと。全員、白紙の状態で情報を共有し、議論し合います。こうすると賛成・反対の意見が活発に出ます。

 会議で座る場所も重要です。多くの会社は会議の際には役職順に座りますが、これでは自由な意見が出てきません。「自由席にしよう」と提案したとしても、日本の会社では、周りを見て空気を読んで、結局は役職順に座ってしまいます。そこで私は朝会の際、毎回抽選で座る場所を決めることにしました。社長である私は真ん中に座り、あとは1番から9番までくじを引いて当たった番号の席に座ります。

 こういうスタイルの朝会を実施して良かったのは、色々な角度から意見が出て案件がブラッシュアップできたこと。例えば営業の案件に対して設備担当者から意見が出たり、設備の案件に対して総務担当者から意見が出たりしたのです。朝会の場で意見を言うことによって各人にその案件の当事者という意識が芽生え、後に実行する段階で色々と手助けしてくれるようになりました。

 会社の経営において、10の施策を打ち出して、すべてが成功するということはあり得ません。5個ぐらいは放っておいてもうまくいくかもしれません。問題は、残り5個のなかなかうまくいかない施策にどう対処するかです。各人が意見を言い合う場をつくっておくと、みんなが一人称になって、なんとかその施策を軌道に乗せようと奮闘してくれます。

 すべての部署において衆知の結集は重要です。施策を立案・実行する際には、少し時間をかけて各人の意見を聞く場を設けること。例えば、会社で決まった施策を実行する際、上意下達で「やれ」と言うのではなく、課長たちに集まってもらい、「どうやってやるのがいいか」と意見を求める。自分からは発言しない場合も多いので、1人ずつ当ててみてもいいでしょう。そうすることでみんなが一人称になります。単なる上意下達なら1分で終わるものが、30分、1時間と、少々時間はかかりますが、このプロセスを踏んでおくことで後の行動が全く変わってきます。

1人の知恵は限られている。多くの人間が色々な角度から考えることが、思考を深めることにつながる。(写真:andreypopov/123RF)