相手の立場になって細やかな配慮をする

 具体的にご高齢のお客様と接する上で参考になることも数多くあります。例えば、「高齢者はトーンの高い声は聞き取りにくいため、お話しする時にはトーンを低くするのがいい」「視野が狭くなるのできちんと認識できる位置から話しかける」といったことです。

 「一度に色々なことを言ってはいけない」ということも学びました。伝票を書いていただいている時に「お届け日はこちらでよろしいですか」「品物はこちらで間違いありませんか」と確認しようとするとご高齢のお客様は混乱してしまう。一つひとつの作業や話を完結させた上で次の話をしていくことが必要です。

 ほかにも、ご高齢の方は財布の中に小銭がたまりがちなことも知りました。我々も外国に行った時、慣れないコインを探して出すのが面倒で、大きい額で払っておつりがたまってしまう経験がありますが、ご高齢の方の場合も全くそれと同じ。大きなお金で買い物をされる機会が増えてしまいます。それを知っていれば「小銭をお持ちですか? どうぞゆっくり数えてください」「よろしければ私が数えましょうか?」とお声かけすることができます。「やってくれるの? ありがとう」「助かるわ」と喜んでいただく場面も増えます。

 研修で学んだことを参考に、プライスカードを変更して読みやすいものにしたり、小形羊羹の箱を変更して開けやすいものにしたりと工夫をしています。こういうことを通して「おいしい和菓子を喜んで召し上がっていただく」という経営理念の実現を目指しています。

 サービスとは時代とともに大きく変わっていくものだと思います。よく私が話を出すのがノードストローム。かつて『ノードストローム・ウェイ』という本がベストセラーになったこともある米国の百貨店です。

サービスは常に進化する

 この本では徹底してお客様第一主義をとり、顧客満足度ナンバーワンとなったノードストロームのサービス手法を解説しています。具体例として、「一度使って合わなかった商品でも返品を受け、返金する」「『商品にアイロンをかけてすぐホテルに持ってきてほしい』という顧客のリクエストに応じた」「『高温でワイシャツを洗ったら縮んでしまった。元通りにできないか』と問い合わせてきた顧客に新しいワイシャツを届けた」といったエピソードを紹介しています。

 20年前に読んだ時、私は「こんなことをして、企業としてやっていけるのだろうか。ここまでサービスしなくてはいけないものなのか」と驚きを持って受け止めました。当時はそういう経営者が多かったのではないでしょうか。しかし、今ならばノードストロームが実行するサービスを聞いて「うちの会社だってやっているよ」「これぐらいはやらないとね」と思う人が多いはずです。それぐらい、この間にサービスは進化しました。これは20年前の話ですが、20年といわず、もっと短いスパンでサービスは時代とともに変わっていると思います。

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