「書院の茶」と「草庵の侘び茶」

木下:ここで一旦整理しておきたいのですが、茶の湯には前回お話を伺った「書院の茶」と、今回お話頂いた「草庵の侘び茶」が同時代に成立していたということですよね。

生形:茶を正しく理解しようとするには、茶には二項対立的な要素があるということを認識しておかないといかんのです。一つは足利義満、義政などの室町将軍や上流武家たちの「書院の茶」。これは今で言うところの広間の茶、棚や風炉釜を使う大寄せの茶の源流になっています。

 もう一つは、新興武家である「国人(こくじん/国衆とも)」層や町衆たちの「草庵の侘び茶」で、これは小間で炉を使って点てる茶の源流と言えます。

木下:書院の茶と草庵の茶の一番の違いというのは、“主客が一室”であるかどうかということなのでしょうか。

生形:その通りです。書院の茶は、点てる人と飲む人が別室であることからも分かるように、身分の差がはっきりしています。侘び茶は、そこに人間関係の上下という意識があったとしても、主客が一室で、同じ高さの畳の上に座り、同じ目線で、茶が点てられてそれを飲むというものです。

木下:書院の茶は、身分の高い人が板の間に敷かれた一段高い畳に座ってというスタイルですよね。

生形:これは画期的なことなんですよ。身分差をハードウェアで明らかにするということは、権力者にとっては重要なことで。権力者は身分秩序をいかに演出するかということを課題にしていたわけです。これに対し、茶室においては身分の区別は無い、主客が対等に互いを敬うべきとしたのが、利休なんです。主客が一体になる「おもてなし」ですね。

木下:一方向的な「サービス」とは違い、主客でともに喜びを共有する。今日耳にすることが多い、日本の「ホスピタリティ」の原点と言えますね。

生形:はい。茶室では、客も亭主の心遣いをもてなしますし、サーバントでなくホストが自ら客に膳を運びますから。