日本書道史に燦然と輝く、三跡

木下:三跡のそれぞれの特徴、魅力などを読者の方に簡単にお伝えしたいのですが。

島谷:道風は、三人の中で最初に挙げられるように、一番尊重されていたところはありますよね。

 書風は代表的な「屏風土代(びょうぶどだい)」をご覧になれば分かりますが、どっしりとして、わりと冷静沈着という表現が合っていると思いますが、優美さも同時にあります。

 道風は和様の美を作ることを目指して、自分がイメージした型にはめようと書いていたところがあると思います。王羲之などを勉強しているので、文字の構造は中国を向いています。

醍醐天皇の為に書いたという、新調される宮廷屏風の下書き
小野道風 筆/屏風土代(三の丸尚蔵館)

木下:余談になりますが、道風は聖徳太子の時代の小野妹子の系統ですよね。

 佐理についてはどうでしょうか。佐理は宮廷の能書として、道風の後継者だったんですよね。

島谷:一つの作品の中に起承転結が入っているのが特徴です。残された手紙が全て“詫び状”というところがいかにも佐理らしいんですけど、「離洛帖(りらくじょう)」や「恩命帖(おんめいじょう)」は最高だと思います。デフォルメ、崩しとしては破綻した部分もありますが、起筆の面白さ、線質の巧みさなど、いろいろな要素が入っています。

 佐理と行成は時代的には被っているんですけど、時代はまだ道風の書風が全盛期でしたから。佐理も行成も、最初は道風のような字が書きたくて書きたくて仕方がなかったところはあります。

大切な宮廷での行事を途中退席したことへの詫び状
藤原佐理 筆/恩命帖(三の丸尚蔵館)

木下:道風のことが夢に出てくるくらい憧れていたということもあるようですけれども。そんな⾏成の、行成らしい書⾵については、どう表現すればいいでしょうか。

島谷:平安中期に藤原北家出身で、「中納言」という特に身分が高かったこともあるかもしれませんが、とにかく優美で格調が高いですよね。それが弱さに繋がると、中国人などはそう言うかもしれませんけれど、たおやかです。

 日本の書で何をもらいたいかと聞かれたら、私は東博にある行成の「白氏詩巻(はくししかん)」をもらいたいです。(参照「藤原行成 筆/白氏詩巻 文化遺産データベース」 )

展覧会の図録の表紙では、藤原行成の「白氏詩巻」が使われた
玄孫の定信が物売りから「屏風土代」とともに買い、今日まで残る