「さっきから聞いてれば『ご意見賜ります』ばかりで、ちっとも質問に答えていないじゃないか。株主の皆さん、馬鹿にされてるんですよ。私はね、ウエスチングハウスの買収から不正会計が始まったと考えている」

 「御質問は簡潔に」

 「ウエスチングハウスの減損を隠蔽した話が日経ビジネスに出た時も、株主の質問は無視された。第三者委員会の調査もウエスチングハウスは対象外に…」

 質問はここで途切れた。おそらくマイクを奪われたのだろう。それでも会場からは何やら叫ぶ声が聞こえるが、モニター越しでは聞き取れない。

 「お静かに願います」と釘を刺した上で、室町社長が回答する。

 「ウエスチングハウスから不正が始まったという認識はしておりません。減損の開示が遅れたことについては反省しており、今後開示姿勢を強化するために広報・IR部門を社長直轄にいたしました」

室町社長は何を守ったのか

 どこまでいっても制度の話。見事である。

 人間として、言いたいこともあっただろう。その気持ちを押し殺し、社長という機関に徹した1年間。個人的には、その先に明るい未来があるわけでもないのに、室町社長は最後まで組織を守り続けた。

 その鋼の意思はどこから生まれたのだろう。個を殺し組織の一員に徹するその生き様は、ある意味、サラリーマンの鑑である。

 だが、あなたはそれで幸せなのか。インタビューが叶うのなら、室町社長に聞きたいのは、それだけである。

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