なるほど形の上では随分、改革が進みましたな。しかし、そもそも東芝は不正会計が発覚する前から「日本で最も先進的なガバナンス制度を導入した会社」と賞賛されていた。形ばかりをいくら整えても、魂が入らなければ意味がない、というのは自ら証明したところである。
株主の皆さんも同じことをお考えのようである。最初の質問者は室町社長にこう問いかけた。
「私、東芝で長年、経理をやっておった者です。松下幸之助さんは不祥事があった時、『ノーと言える経理になれ』と説いたそうです。経理が社長のいいなりではダメです。もう一つ大切なのは経営者の力。京セラに売却された東芝のケミカル部門は稲盛和夫さんの指導で黒字になったと言います。東芝は制度ばかり変えていますが、稲盛さんみたいな人を入れたらいいんじゃないですか」
そう。仏を掘っても魂が入らねば意味がありません。これに対して室町社長はこうおっしゃる。
「経理財務の独立性を高めるため、CFOの任免権を社長から指名委員会に移しました」
やっぱり制度の話である。
中盤に登場したのは、おそらく現役の女性社員。
「パワハラ、セクハラは今も続く」
「改革をしたとおっしゃいますが、パワハラ、セクハラは今も続いています。上司は部下に『何も考えるな、指示に従え』と命じています。在庫管理システムについても10年前から…」
「質問は簡潔にお願いします」と質問を遮る室町社長。
「はい、在庫管理システムについては10年以上前から現場が『おかしい』と言っているのに課長やその上の人が『変える必要はない』と…」
「簡潔にお願いします」
再び質問を遮り、回答する室町社長。
「内部通報制度は十分、充実させております」
またしても制度である。
杓子定規な室町社長の返答ぶりに苛立った株主が立ち上がった。
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