何枚ものモニターや機材に囲まれたコントロール・ルームでは、5人の男たちが真剣勝負をしていた。

 「おーい、扉を開けてチルド室見せて」

 インカムをかけた男が叫ぶと、モニターに映ったキャストがすかさず冷蔵庫の扉を開けた。井原氏が解説する。

 「今、叫んだのがセールスプロデューサー。彼のイヤホンはコールセンターの担当者と繋がっていて、『チルド室を見たい』という要望がきた。それをキャストに伝えたんです」

 これがアパレルだと「裏地を見せろ」とか「ポケットはいくつある」とか、コールセンターには様々な質問が寄せられる。その声にスタジオは瞬時に答える。インタラクティブじゃありませんか。

 「お、売れた」

 モニター画面を見ていた井原氏がつぶやく。

「効いてる、効いてる」

 何人の視聴者から電話がかかっているか。何人が順番待ちしているか。何台売れたか。モニターには2秒おきに最新の情報が映し出される。セールスプロデューサーはそれを見ながら、番組の内容を変えていく。

 「今のコメント効いてる、効いてる。もう一回繰り返して!」

 視聴者の反応を見ながら、即興で演出を変える。台本なしのライブである。これは面白い。

 感心しきりのシニア記者に井原氏は言った。

 「僕らはただモノを売っているつもりはありません。物販付きのライブ映画を作っているんです。視聴者にどれだけ『すごい!』と感動してもらうか。感動がそのまま売り上げになります」

 例えば、今の季節、フードバイヤーは来年2月のバレンタインデーを目指し、ショップチャンネルでしか買えない可愛いチョコレートを探しにベルギー、イタリアを巡っているという。

 1週間に紹介する商品は700アイテム。1アイテム1時間。1日に24個の「ここでしか買えない」「すごく安い」商品を取り揃え、それを全力でアピールする。その真剣勝負が視聴者を引き込む。流行りのビッグデータやAI(人工知能)ではなく、あくまで人が汗をかくことで、感動を生み出す。地味だけど、すごい努力だ。

 テレビショッピングで誰より汗をかいてきたのは、ライバル、ジャパネットたかたの高田明さんだろう。つい意地悪な質問をしたくなってしまったシニア記者である。

 「やっぱり、高田明さんの引退は御社にとって追い風ですか」