「いつもそんなに売れるのですか」
 「いや、この日は特別で。ダイソンさんに頑張ってもらって、ウチでしか買えない特別セットでいいお値段を出してもらいました。おかげで2008年の記録を8年ぶりに塗り替えることができました」

 そうか。頑張ったんだ。でも時代はネットでしょ。

 「テレビショッピングって斜陽じゃないんですか」

 聞きにくいことは、遠回しにせず、ズバリと聞いてしまう方がよろしい。聞かれる方も、妙に気を使われるより楽だったりする。

 「そうなんですよ。この会社に入るまで、僕もそう思ってたんですよ」

 そ、そうなんですか。やたら屈託のないカリスマである。

 「ところがどっこい。うちの会社、この前の決算で18期連続の増収なんですよ。テレビ通販、まだまだ伸ばせると思いますよ」

 そんなこと言ったって、ネットで何でも買える時代じゃん。楽天だとポイントたまるし、アマゾンはその日に届くし。シニア記者の顔に浮かんだ疑惑を敏感に感じ取り、カリスマ・バイヤーは言った。

 「じゃあ、スタジオに行きましょうか。見てもらった方が早いかも」

 見せてもらおうじゃありませんか。8億円売る現場を。

気合いだけではモノは売れません

 隣のビルの2階にあるスタジオに行くと、そこはまさに本番中。当たり前である。ショップチャンネルは24時間365日生放送なのだ。

 「はい、ひき肉を冷凍してしまうと、これこの通り、全然切れません。でもこの冷蔵庫で冷凍するとほら、この通り」

 自社の製品が登場する日は毎回、広島から駆けつけているという三菱電機の名物社員が、サクッとひき肉を切る。

 「おおっ!」

 女性キャストが感嘆する。

 いつもテレビで見ている光景が目の前で繰り広げられる。たった二人だがテンション高い。「ほら、すごいでしょー!」「買いたくなるでしょー!」という気合に溢れている。

 だが気合だけでモノが売れるなら、ワシだってお金持ちになる自信がある。世の中、それでは通用しないのだ。

 「じゃあ、秘密を教えましょう」

 不思議そうにしているシニア記者を、井原氏は別の階にあるコントロール・ルームへと誘った。