おそらくメディア各社から抗議が殺到し(または、殺到することを予期して)、東芝とシャープの広報担当者が段取りをつけたのだろう。

 5月12日に開かれた東芝とシャープの2016年3月期決算発表。当初は完全に時間がかぶるとみられたが、東芝が午後2時10分から2時40分。シャープが午後3時10分から3時40分。東芝本社と、シャープが記者会見を開くシーバンス南館は徒歩5分の距離(エレベーターの上り下りを勘案すると移動時間は15分)。頑張ればハシゴできる設定になっていた。

 ここまでご配慮いただいたら、ハシゴしないわけには行きますまい。きっと東芝の会見は長引いて、ビルとビルの間を走る羽目になるでしょう。いいですよ。そのために週20キロメートルのランニングを自らに課しているシニア記者である。走ってやろうではありませんか。

 しかしこの日は自宅で朝刊を開いて腰を抜かした。各紙1面には「日産自動車が三菱自動車に出資」という大ニュースが踊っているではありませんか。

ゴーンさんに行こうか、いやしかし

 おまけに両社は朝から、この報道を事実上認めるコメントを流している。記者会見は必至である。恐る恐る日産の広報に問い合わせると、案の定、4時から横浜のグローバル本社で記者会見があるという。

 悩みました。カルロス・ゴーン社長にも、しばらくお目にかかっていない。不祥事がきっかけとはいえ、日本の自動車業界にとっては大きな節目の日である。できれば、この目で見ておきたい。記者会見で質問したい。今日の純粋なニューズバリューでいえば、東芝+シャープより日産・三菱自である。

 だがしかし、それでもワシは浜松町に赴かねばならない。なぜなら、今日がシャープ高橋興三社長の最後の記者会見になるからだ。

 すでにホンハイの戴正呉副総裁が次期シャープの社長になる、という新聞辞令が出ている。シニア記者の取材網に引っかかる情報も同じだった。退任する高橋社長の記者会見をこの目に焼き付けよう。ここは義理と人情である。そう決めて浜松町に向かった。

 まずは東芝。午後1時50分に到着し、まずまずの席を確保した。午後2時には適時開示で決算資料が配られることになっている。ノートを開き、心を落ち着かせる。見回すと、紙のノートを広げているのはワシだけ。みんなノートパソコンをパチパチしておる。ま、負けるもんか。

 だが午後2時を過ぎても資料は配られない。配られないまま、本日の発表者、平田正善代表執行役上席常務が入場。それでも記者会見は始まらず、気まずそうに座っている平田常務である。待つこと10分、広報担当者からアナウンスが入る。

「資料の作成が遅れております。少々お待ち下さい」

 お、く、れ、る?

 いや、ダメでしょ。マージンは30分しかないんだから。シャープが始まっちゃうでしょ。そわそわするシニア記者。だが周りの若者たちは泰然自若。東芝担当とシャープ担当で役割分担しているのだ。大新聞には記者が大勢いますからね。たった一人のフリーランスでは太刀打ちできませんよ。あー「シニア記者2号」が欲しい。

 てなことを考えているうちに午後2時15分、ようやく決算資料が配られた。幸い、平田常務のすぐれた滑舌のおかげで、2時30分には質疑応答が始まった。