裏道くねくね、運転手さんは最大限の努力をしてくれたが、浜松町に着いたのは3時5分。39階の会場に着くと、すでに室町正志社長のプレゼンが始まっていた。痛恨である。

思えば長い道のりであった

 しかし、今日の記者会見は、日経ビジネス東芝取材班の頑張りがなければおそらく実現していなかったものである。

 他の報道機関が「歴代3社長が辞めることだし、そろそろ許してあげようか」と緩み始めた後、日経ビジネスだけは「原発、減損、原発、減損」と恐るべき執拗さで報道し続けた。ようやく、真実の一端が明るみに出るのである。

 思えば長い道のりであった。

 東芝の不正会計が発覚したのが去年の夏。経団連会長を二人も輩出し「日本のリーダー」と目されていた会社が、なんと2000億円を超える利益の水増しに手を染めていたのである。

 なんで?

 シニア記者の頭の中はクエスチョンマークだらけになった。だから考えた。事情を知っていそうな人に、片端から話を聞いた。日経ビジネス、東芝取材班の面々とも散々、議論した。

 そして、辿り着いた答えが「ウエスチングハウス」だった。

 東芝はこの会社を2006年に6000億円超で買収した。

 「高すぎるんじゃね?」

 市場関係者の多くは疑問を呈したが、東芝は「2015年までに世界で39基を新規受注する」と豪語した。確かに、そんなに受注できるなら、元が取れるかもしれん。みんなそう思った。

 だがリーマン・ショックと東京電力の福島第一原発事故を経て、原発の市場環境は氷河期に突入。ぜんぜん売れなくなってしまったのだ。

 「やっぱ高すぎたんじゃね?」

決算発表のたびに、アナリストは問い続けた。

 会社を買った後で、その会社の価値が下がったら、簿価を時価に合わせる会計処理が必要になる。これを減損という。

 「減損やるでしょ?」

 アナリストが聞くたびに、東芝は「やりません。ウエスチングハウスは好調です」と強弁してきた。

 「じゃあ、財務状況を開示してくれ」とアナリストが言うと「それはできません」と逃げた。

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