
堺駅に集まった300人の報道陣は、シャープが用意した大型観光バスでSDP(堺ディスプレイプロダクト)に護送された。台湾からも40人を超える報道関係者が詰めかけており、車内で中国語が飛び交う。
SDPはシャープの業績悪化の原因になり、2012年にテリー会長が個人で半分を買い上げた、曰く付きの工場である。報道陣を満載したバスは、巨大な工場の敷地に静かに滑り込んだ。
激しいポジション争い、そして会見が始まった
SDPの大集会場はあっとゆう間にテレビカメラと記者とアナリストで埋め尽くされた。
「だから立つなって言ってんだろ。ルール守れよ」
前方に陣取るスチールのカメラマンと、後ろに三脚を構えるテレビのカメラマンの間で激しいポジション争いが繰り広げられているうちに、記者会見が始まった。

出席者はホンハイ側がテリー会長と戴正呉副総裁、シャープは高橋興三社長一人である。テリー会長は明るめの紺のスーツに紫色のネクタイ。戴副総裁と高橋社長はお揃いでクリーム色のネクタイを締めている。「仲良し」の演出か。それともこれも風水か。
高橋社長のスピーチが終わり、いよいよ真打の登場である。演題に立ったテリー会長は、傍に置かれた8Kの液晶ディスプレーに映し出された自分の姿を指してこう言った。
「このディスプレーは66歳の人間を、若者のように見せてくれる。これがシャープの価値だ」
決して流暢ではないが、その分聞き取りやすい英語でテリー会長が言うと、会場はドッと笑いに包まれた。相変わらず役者である。
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