強いシャープの組織能力は、「技術のシャープ」ではなく「商品企画力のシャープ」

 大リストラの風が吹き荒れるシャープにあって、シャープは今でもユニークな製品を出し続けている。ちょっと前の商品で言えば、ウォーターオープンで強いブランド力を築いた「ヘルシオ」。他社も同様な機能をつけたオーブンレンジを追随して発売したが、「ヘルシオ」ブランドは強かった。

 当時、他の白物家電メーカーの担当者に聞いた話が印象的だった。「技術的にはうちの方が上・・・」、「特別新しい技術というわけではないのに・・・」。要は負け惜しみである。そういえば、NECがスマートフォンから撤退する数年前に社長が「技術的にはすべての面でうちの商品の方がiPhoneより上回っている。これで負けるはずがない。」と言っていた。「日本のものづくりは技術の高さなのだから」という話を良く聞くが、実はそれが日本の家電メーカー(電機メーカーとは言っていない。)を弱体化させたのではないか。

 話をシャープに戻そう。シャープは勢いに乗ると「おもろい」商品を次々に出す会社だ。「ヘルシオ・ホットクック(電気無水鍋)」、お茶の新しい飲み方を提案した「ヘルシオ・お茶プレッソ」、プラズマクラスター内蔵LED電球など、いまだに「目のつけどころ」の良さはキラリと光っている。しかもこれらの商品の共通点は、新技術の開発がメインではなく、既存の技術と技術の組み合わせの商品であるが、誰も思いつかないような組み合わせで新たな商品を生み出しているところにある。

 これこそシャープの力、すなわち、0から新しいアイデアを実現する、商品構想開発力、商品企画力である。大学で技術経営の講義を行うときに、科学は法則であり普遍的なものであり陳腐化しないが、技術は応用であり陳腐化するものである、という話をしている。技術とはいくら抱え込んで大切にしてもいつかは腐るものである。

 シャープはこの40年間、液晶という技術に集中投資することで、経営の差別化を図ってきたが、液晶技術にしても陳腐化の運命は避けられるものではない。そもそも、技術はツールであり、必要に応じて開発されるものである。シャープの液晶の歴史にしても、電卓、ゲーム機、小型白黒テレビ、ビデオカメラ、液晶テレビなど、様々な製品アイデアをその時々の液晶技術で実現可能な製品として商品化し、顧客に受け入れられてきたのである。消費者、とくにBtoCである家電の顧客は技術を買うのではなく商品を買うのだ(だからあえて電機ではないと)。

 シャープの強みを一番に挙げるとすれば、液晶技術をその時々の開発段階に合わせて次々と開発してきた商品企画力がまず一番にあり、そうした企画案を実施するのに必要な技術開発力が「目のつけどころ」の違う商品に必要なツールとして求められてきたといってもいい。

「液晶技術のシャープ」という呪縛がシャープを潰した

 各種報道によると高橋社長は社長就任以来、各社からの投資の受け入れで日々のキャッシュフローを何とかする、ということに追われていたと言われる。社長が企業経営に専念できず、金策に走り続けなければならなかったという環境は、大西さんのいうとおり可哀想ではあるが、高橋社長の一番の失策は、「これからも液晶技術がシャープのコア戦略だ」と言い続け、「なるほどそれならシャープの将来は明るいね」と思わせるような将来のビジョンを示すことが最後までできなかったところにある。

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