(写真:山田 哲也)
(写真:山田 哲也)

 今回、本コラムの記者である大西康之と懇意にしている早稲田大学ビジネススクールの長内厚准教授から寄稿が届いた。大西記者を通じて長内氏が訴えたかったのは、シャープの経営問題について。[番外編]として、読者にお届けする。

大西さん、やっぱり高橋さんを甘やかしちゃダメなのでは?

 1月29日、日本経済新聞電子版はシャープの高橋興三社長以下3首脳の退陣と産業革新機構による再建案の受入の方向と速報した。いよいよ、大詰めの時が来た。

 ところで、シャープの一連の経営不振については、11月2日の日経ビジネスオンラインに掲載された大西編集委員の「高橋社長をいじめるな!シニア記者はシャープの味方です」を読まれた方も多いだろう。最近のシャープ、東芝の暗ーい話をこんなに明るく書いている人は大西さんしかいない。

 というか、大西さんは日経新聞本紙にいらした頃から知っているが、日経ビジネスに来てからの大西さんははじけっぷりがヤバい。もう「大西康之・突撃!ニュースの現場」のバナーからしてヤバい。日経ビジネスオンラインで水を得たこのオッサンを止められるのはもう誰もいないかもしれない。大体、日経ビジネスで一人称をワシという人が他にいるだろうか。

 こんな軽いノリで書き始めたものの、いよいよ高橋社長退任の時が来てしまったようだ。「目のつけどころが違う」、「世界の亀山」で一世を風靡したシャープがここまでの経営悪化に見舞われたのはなぜか。結論から言えば、経営の問題である。誰? という話であれば、経営者、トップマネジメントの問題である。誰を強調したのは、シャープにはいまだ健全で強い製品開発の現場が残されているからだ。つけ加えるなら、「強い現場」という組織があればシャープはどう転んでもなんとかなる、というのが筆者の考えであり、だからこそ、こんな楽観的な口調で語れるのだ。

決断できない経営者は断罪されるべき。でも・・・

 シャープの経営悪化は、町田勝彦会長、片山幹雄社長時代から、奥田隆司社長の時代に、「決断できないシャープ」を続けてきた結果だと筆者は考える。現在の高橋社長が就任したときにはもはや手遅れだったのかもしれない。その点で、「高橋さんをいじめるな」という大西さんの意見に賛成できる部分もある。しかし、退陣を明らかにしている人に鞭を打つようで申し訳ない気もするのだが、全世界で7000人規模のリストラを実行した経営者としての経営責任は免れないだろう。

 ということをいいたいので原稿書いていいですか、と大西さんに電話をしたところ、「いいねぇ、書いたら送って~」という軽いノリ。いいですね。この明るさ。こういう楽観的なところは、実はシャープの現場にも通じる。他誌の原稿でも書いたのだが、シャープはこれだけ長期間、最悪な経営状況が続いていたら社内のモチベーションはだだ下がりだろうし、そうした状況の職場で、シャープらしい面白い商品がだせるのか? と心配になったものの、それは杞憂であったようである。

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