また習氏の「子飼い」とされる陳敏爾・重慶市党委書記(57歳)が常務委員入りするかも焦点だったが、常務委員を含む25人で構成される政治局委員入りにとどまった。また、胡錦濤・前国家主席や李首相を輩出した共産主義青年団出身の次期エースとされ、同じく常務委員入りの可能性が出ていた胡春華・広東省党委書記(54歳)も常務委員には昇格しなかった。結局、次の指導者候補となり得る50代の常務委員入りはなかったが、習氏の長期政権への布石なのだろうか。

 この先5年の中国を率いる新たな常務委員メンバーは「習氏のチーム」と言った様相だ。特に栗戦書氏と王滬寧氏はこの5年、すぐそばで習氏を支えてきた側近だ。習氏と栗氏は1980年代に河北省の近接する県の書記として知り合って以来の関係だという。また王氏は思想面などのブレーンとして習氏の外遊に同行するなどしてきた。また趙楽際氏は人事を差配する党中央組織部長として反腐敗を後方から支え、習氏に近い人物の昇格などを実現してきた。

漂い始めた文化大革命の空気

 24日に閉幕した党大会では、習氏の名を冠した「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」を行動指針として盛り込んだ党規約の改正案が採択され、習氏は毛沢東に並ぶ権威となった。習氏は党大会冒頭の演説で次のように述べている。「新時代の中国の特色ある社会主義の偉大な勝利を勝ち取り、中華民族の偉大な復興という中国の夢の実現に向けてたゆまず奮闘しよう」。これが習氏をはじめとする新最高指導部の目標となる。

 具体的には何をしていくのか。特に経済面について見ていきたい。習氏は演説で「供給側構造改革を深化させる」「革新型国家の建設を加速する」などと述べた。「世界レベルの先進的製造業クラスターをいくつか育成」し、「経済体制の改革は(中略)公平で秩序のある競争、企業の優勝劣敗を目指して進まなければならない」と説く。また習氏は「開放は進歩をもたらし、閉鎖は遅れを招く」とも述べた。

 これだけ見れば、中国の市場経済は一段と開放に向かうようにも思えるが、その一方で「全活動に対する党の指導を堅持する」とも述べている。革新や開放はあくまで共産党の指導の範囲内で、ということになる。それどころか、共産党や国による締め付けはますます厳しくなっているように見える。

 冒頭の中国人経営者が経験した「事件」はその一端だろうか。この経営者はまだ若く文化大革命を経験してはいない。だが、知識層だった経営者の父親は農村に下放された経験がある。父親の経験を聞いたこの経営者は、現在の中国に当時と似た雰囲気を嗅ぎ取った。

 習氏の権威がさらに強まるこの先の5年は、中国の企業経営者であっても難しい判断を迫られる局面が増えるかもしれない。「中華民族の復興を追求する」という習氏の所信表明に照らせば、日本企業を含む外資企業にとってはさらに厳しいものとなりかねない。