中国当局は昨年秋、仮想通貨を使った資金調達であるICO(イニシャル・コイン・オファリング)を禁止。仮想通貨の取引所も強制的に閉鎖した。MERCULETは中国を本拠としているが、ジャン氏は「シンガポールや米シリコンバレーにも拠点を置いた。東南アジアや中東、欧州の企業とも連携して、世界で業務を手がけたい」と話す。世界拠点には日本も含まれる。日本で既に法人を立ち上げており、仮想通貨取引所の開設などを目指すという。

 中国当局が規制を導入して以来、中国のブロックチェーン関連企業や仮想通貨関連企業が日本に注目している。仮想通貨をいち早く合法化したからだ。その後、コインチェックで仮想通貨「NEM」の巨額流出が起き、日本の金融当局も監視強化に動いている。新たな仮想通貨取引所の開設は容易ではないと見られる。だが、それでもジャン氏は「日本は仮想通貨取引の中心国になる」と意に介さない。

高まる巨大プラットフォーム企業への不信感

 「今後、アプリを使う人のニーズは一層、細分化されていく。そうなると巨大な1つのアプリ、サービスではニーズに応えきれず、様々な中小のサービスが登場するはずだ。これら中小のサービスとユーザーをつなぐのが我々の狙い。アリババやテンセントのようなネットの巨人が独占する時代は終わると考えている」。ジャン氏はこう語る。

 ジャン氏が構想するトークンによるエコシステムが成立するのかどうかは分からない。ユーザー側にトークンを得るメリットがなければアプリの利用につながらない。一方でフェイスブックの個人データ流出問題のように、巨大なIT企業が利用者のデータを収集・管理し、利用する仕組みに疑問符が付き出しているのも確かだ。

 個人情報が利用されることに鷹揚とされる中国でも、今年に入りプライバシーに関する炎上事案がいくつか起きている。3月には百度(バイドゥ)の李彦宏CEOがシンポジウムで「中国人は生活の便利さや効率性のために、進んでプライバシーを提供する」と発言し、中国国営メディアまでが取り上げる騒ぎになった。ジャン氏の取り組みは、巨大プラットフォーム企業の支配を崩す一石となるのだろうか。