飛飛(フェイフェイ・仮名)は中国広東省東莞市で工場を経営している。台湾から大陸に移り、2000年代前半に自分の工場を持った。製造しているのは季節物の雑貨だ。
顧客は海外の小売りチェーンなどで、この工場で作られた製品が世界各地へ輸出される。欧州や日本にも輸出しているが、最大の輸出先は米国だ。世界最大の小売業であるウォルマート・ストアーズや米小売り大手のコストコ・ホールセールには、フェイフェイの工場で作られた製品が並ぶ。

4月3日、米通商代表部は中国の知的財産権侵害に対する制裁関税の原案を公表した。2018年の想定輸入額で500億ドル(約5兆3000億円)相当の1333品目に25%の関税をかける。これに対して中国政府も4日、25%の追加関税の準備をする106品目を発表。関税の対象額は米国と同様の500億ドル相当となる。
米国が制裁関税を課すとしている製品は航空機や自動車、半導体、医薬品など、中国が国を挙げてレベルアップを図ろうといている分野が中心。製造業の強化を目指す「中国製造2025」の重点分野と重なる。米国などの知的財産を巧みに取り込みながら、米国に追いつき追い越そうとしている分野が制裁の対象だ。
一方、衣料品や靴など米国の消費者への影響が大きくなりそうな消費財は対象としなかった。仮に今回の制裁措置が発動となっても、フェイフェイの商売への直接的な影響は限定的だ。しかし、「米国の顧客との商談が今後どうなるかは見通せない」と不安を募らせる。
貿易摩擦が米国の消費を冷えこませるとの見方が有力になれば、顧客は発注量を減らすだろう。また、米国の景気が減速し、ドル安に動けば、米国の顧客側から見た輸入コストは上昇する。輸入コスト上昇のしわ寄せはフェイフェイの工場に来る。最悪の場合、別の工場、別の国に生産を奪われるかもしれない。
フェイフェイが作っているのは季節性が強い商品で、年単位で契約を交わす。2018年分の製品については既に受注が終わっているため影響はない。ただ、「来年以降も取引が続くか様子を見ている」。中米両国の今後の交渉を見極めるため、2019年分の原材料については現時点で購入を保留しているという。「私のところは年単位で動いているからまだいい。電子製品や原材料、半加工品などの工場では既に減産を始めているところもある」。
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