尖閣諸島を巡る反日活動では、一部が暴徒化した(写真:ロイター/アフロ)

 「尖閣問題の時は他人事だったけど、やっとあの時の日本の気持ちが分かったよ」。

 中国に駐在するある日本人は最近、知り合いの韓国人駐在員がこう漏らすのを聞いた。「あの時」とは2012年に日本政府が尖閣諸島を国有化した時を指す。中国で、日本車や日系企業の店舗・工場などを破壊するなど、反日運動が高まった。今のところ韓国の製品や店舗を対象にした大規模なデモや破壊行為は起きていないが、中国で活動する韓国企業や韓国人は2012年以降に日本人が感じた気持ちを理解するほどに風当たりが強まっている。

 原因は在韓米軍が進めるTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)の配備だ。中国は韓国にTHAADが配備されることに一貫して反対してきた。昨年、米国と韓国がTHAADの配備を決定した後、中国のメディアは韓国芸能人や韓国ドラマの露出を制限した。中国政府は否定しているが、韓国メディアは「限韓令」が敷かれたと報じている。

 

 2月27日にTHAADの配備場所が決まったことで、中国は反発を拡大させている。特に狙われているのが、配備場所を提供したロッテグループだ。ロッテは韓国南部の慶尚北道・星州(ソンジュ)のゴルフ場をTHAAD配備場所として韓国政府に提供することを決定し、韓国国防省と契約を結んだ。

 ロッテは中国国内で幅広い事業を展開している。菓子や飲料を販売するほか、大型スーパーや百貨店などを運営。石油化学や不動産開発、金融といったビジネスも手がけてきた。中国メディアの報道によると、ロッテは1994年の中国進出以来、600億元(約1兆円)を投資。大型スーパーのロッテマートの店舗数は150に及び、売上高は3兆ウォン(約3000億円)を超えるという。日中関係の悪化に苦しんできた日本企業を尻目に、ロッテは中国で順調に事業を伸ばしてきた。だが、THAAD問題で状況は一変した。

 ロッテが配備場所の提供を決めた翌日の2月28日午後、上海市内にあるロッテマートを訪れてみた。通常通り営業していたものの、店内には数えるほどの客しかいない。店員は時間を持て余し、同僚と立ち話をしている。平日午後の早い時間であったことやネットの配達サービスが普及していることを差し引いても、あまりにも寂しい客の入りだ。

上海市内のロッテマートの店舗