無論、アリババの構想がすべて実現するわけではないだろう。ただIOCにとっても、マー会長の「五輪デジタル化」にかける期待は大きい。バッハ会長はアリババ施設オープンの式典で、「IOCはアリババとのパートナーシップを通じて、デジタル化の新時代に入る」と語った。

 五輪が世界の多くの人々を楽しませる唯一無二のイベントであることは間違いない。一方で、あまりにも巨大になったこのスポーツイベントをどのように存続していくのかが、IOCにとって大きな課題となっている。

肥大化した五輪のコストを減らせるか

 開催国や開催都市にとって五輪の経費負担は重く、近年では招致レースから撤退する都市が多い。昨年9月のIOC総会では24年と28年の夏季五輪の開催地をパリと米ロサンゼルスにすると決めた。2大会の開催地を同時に決定するのは96年ぶりのこと。24年大会の候補地としてパリとロスしか残らず、2都市を2つの大会に割り振った形だ。

 バッハ会長は10日の式典で「アリババはデジタル化によるコストと無駄の削減でIOCを支えてくれる」と語った。クラウドに保存した映像の利用や、交通手段・スタジアム立地の最適化でどのくらいのコストを削減できるかは定かではないが、肥大化する五輪の運営コストを考えれば、アリババに期待がかかるのも当然かもしれない。

 コスト削減だけでなく、収入や開催地の決定の面でも期待は大きそうだ。アリババのクリス・トンCMO(最高マーケティング責任者)は20年の東京五輪でアリババが貢献できることの1つとして、傘下のオンライン旅行プラットフォーム「Fliggy(飛猪)」などを活用して、より多くの中国人観光客に日本を訪れてもらえると説明した。

 17年に海外を訪れた中国人旅行者は日本の総人口を上回る延べ1億3000万人弱に達した。20年には延べ2億人になるとの予測もある。チケット収入増への期待に加え、五輪を契機に中国人観光客が訪れるようになれば開催都市にとってもうまみがあり、開催に立候補してもらうための売りの1つになり得る。

 さらにIOCの収入の大部分を占める放送権については、なお北米向けが放送権収入全体の過半を占める。ただアジア向けの割合は年々上昇しており、中でも経済成長が続く中国への期待は高そうだ。

 ただ平昌五輪に関して言えば、中国国内の関心はそれほど高いとは言えない。羽生選手の金メダルは中国でも報じられたが、そもそも中国にとって冬季五輪は、夏季五輪の体操や卓球、飛び込みのようにお家芸と言えるような競技がなく、報道も控えめだ。

 自国開催となる22年の北京冬季大会が五輪スポンサーとしてのアリババの試金石となりそうだ。平昌の後も東京、北京と東アジアの都市で続けて開催される3つの大会が五輪にとって大きな転換点となる可能性を秘めている。