中国のスマホメーカーというと2010年の創業から短期間で販売を伸ばしたシャオミが注目されてきた。低価格ながら高スペックの商品を、ネット販売を中心とする巧みなマーケティングで売る手法が、スマホが広く普及するタイミングの中国で支持された。現在はスマホ以外にも空気清浄器や浄水器、炊飯器、テレビなど様々な商品を販売しており、スマホで獲得したシャオミファンを囲い込む戦略を取る。

 OPPOが取ってきた戦略は、シャオミのそれとは正反対とよく言われる。販売はリアルの店舗が中心で、中国国内で20万店以上の販売網を持つ。このリアルの店舗網が特に地方でのOPPOの強さに結びついている。

OPPOは実店舗での販売が中心
OPPOは実店舗での販売が中心

 主力機種の「R9s」は約2800~3500元(約4万4000~5万7000円)で、iPhoneほどではないが中高価格帯の部類に入る。価格の安さではなく、カメラで撮影した映像の美しさや電池の持ちといった機能を売り物にしてきた。高品質の商品をリアルの店舗で体験してもらい、販売につなげる手法だ。OPPO海外ブランド管理部の潭宏涛ディレクターも「特徴ある商品と過去10年のリアルの販売網とのつながりが我々の強みだ」と話す。

スマホという「本分」に集中する

 それが、急速に変化を遂げる中国の消費とかみ合った。「少し前までは、とりあえずスマホを持てればいいという人が多く、品質に対する要求はそれほど高くなかったが、現在は消費者の見る目が厳しくなっている」と潭氏は言う。一方で、中国メーカーのスマホの品質が上がったことで、今ではiPhoneを持つ特別感が下がったことも、OPPOに代表される中国メーカーの躍進につながっている。つい2年ほど前まではiPhoneを持っていることが1つのステータスになっていた。

 また、OPPOが販売するのは、スマホとバッテリーなど一部の関連商品のみ。中国の多くの企業が「生態系を構築する」という言い方で、様々な事業に手を広げていくのとは対照的だ。スマホの製造を台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)に代表される受託製造企業に任せる企業が多い中、OPPOは自社工場で製造する戦略を取ってきた。

 こうした戦略の背景にあるのがOPPOのオフィスの扉にもあった「本分」だ。同社は「本分」を経営理念に掲げている。陳CEOも以前、「我々は外部の人たちに、若くて時流に乗った会社だという印象を与えているが、我々がもっとも大事にしている価値観は『本分』だ」と発言している。「他に発展の余地がある事業があるとしても、我々はまず自分たちがやるべきことをやる。この業界は競争が激しいが、競争相手は関係がない」。潭氏は「本分」の意味をこう解説する。

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