宅配便や出前の配達員の多くは、農村や別の都市から上海にやってきた人が多い。春節が近づいて、すでに配達員たちの帰省が始まり、現場の配達員が足りなくなったのだろう。店舗や配達員の間でどのようなやり取りがあったか詳しくは分からないが、配達員同士が現場で注文を交換して近隣の配達をまとめたのかもしれない。想像の域を出ないが、このあたりの融通のきかせ方はいかにも中国らしい。

 出前アプリ3社は、春節期間中は配送に時間がかかることを通知したり、一部の地区で配送費を引き上げたりしている。また、出前アプリに登録されている一部の店舗の中には、「最低消費料金」を引き上げているところもある。中国では自宅にこもり、ネットばかり見ている人たちを「宅男」「宅女」と言う。中国のネットメディアは、春節期間中は出前の配送費が上がるなどすることから、宅男・宅女が生活に困るかもしれないといった記事を掲載している。

 春節の「外売」事情から、ネットを使った様々なサービスが日常生活に浸透しており、あらためて分かる。また、雇用の観点から見れば、こうしたネット通販や出前の配達員の仕事が、農村から都市へ出稼ぎに来ている人たちの新たな働き口になっている。これは「世界の工場」から内需主導型へと経済構造の転換を目指す中国政府の方針と合致する。

「タクシーがつかまらない」が大きな問題に

 この春節期間で話題となっているのが配車アプリの「滴滴出行」だ。

 上海に住む30代の女性は春節連休の直前、子供が通う英語塾から帰る際に滴滴のアプリを使ってタクシー呼ぼうとした。だが、応じるタクシーが一向に現れない。

 滴滴にはタクシーを呼ぶ際に、チップを上乗せする仕組みがある。女性は仕方なく、チップを払ってタクシーを呼び、無事に帰宅した。滴滴のアプリは、ウーバー型のライドシェアサービスと一般タクシーを選んで呼ぶことができる。チップの仕組みがあるのは一般タクシー。ライドシェア型はウーバーと同じく、客が多く車が少ない時間帯は自動的に値段が上がる。

 もともと帰宅する人が集中する平日の午後6時前後や金曜日の夜などは、チップを上乗せしないとタクシーがつかまりづらかった。しかし、春節が間近に迫る時期となり、運転手が減少する一方で、移動する人が増えたことで、平時でも「流しのタクシーが止まってくれない」「チップを上乗せしないとつかまらない」状況になった。

 このような状況に多くの人が不満を持ち、メディアも大きくとりあげるようになった。ただ、春節の時期に需給が逼迫するのは毎年のこと。今年、これほどまでにタクシーがつかまりにくくなったのにはわけがある。

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