「ほどよし1号機」が撮影した画像。観測データは農業や都市開発への応用を想定している(写真:アクセルスペース提供)

 周りに前例がないことから、自社保有の衛星をどうビジネスに結びつけるか、相手企業にも自分たちにも分からなかった。専用衛星を飛ばすウェザーニューズの事例は特殊なのかもしれない。より多くの企業に役立つ活用事例を作りたいと考えていたところに、内閣府の最先端研究開発支援プログラムへの参画の機会を得た。

 そこで製作した「ほどよし1号機」は地上の様子を撮影・識別する分解能を6.7mと高性能なものにした。小型衛星でこの性能であればインパクトがあると考えていたが、それでも買い手は現れなかった。「いいモノを作れば売れる、という大学発ベンチャーが陥りがちなワナにはまってしまった」(中村氏)

継続的な観測にニーズ

 「1」と「ほどよし」の実績をもってしても顧客が増えない。その結果を踏まえてアクセルスペースは大きく経営のかじを切った。それまで営業した企業からは、低コストとはいえ1基当たり数億円する費用や、故障したときのリスク、打ち上げまで長期間待たねばならないことに懸念の声が上がっていた。ならばそのリスクを全て自社で負い、企業が本当に欲しいサービスだけを提供しようと考えた。その発想から生まれたのが、現在進行中の「AxelGlobe」プロジェクトだ。

 「ウェザーニューズにしても、求められているのは衛星本体ではなく、そこからとれる観測データ」(中村氏)。AxelGlobeは複数の小型衛星を連携させ、地球上の人間が活動する全領域を1日1回観測するというもの。企業からすれば衛星の故障リスクなどを負わずに観測データを受け取れる。

 17年中にプロジェクト用の衛星「GRUS」を3基打ち上げ、22年までに50基体制にする目標だ。1基の性能では大型衛星にかなわない。低コストを生かし、複数基で広範囲をカバーできる観測インフラの構築を目指す。

宇宙産業の市場規模は拡大傾向
●世界の宇宙産業売上高

 観測データの用途は各地域の現状把握だけにとどまらない。地域の変化を継続的に捉え分析することで、将来の動向を予測することができるようになるという。応用先は多岐にわたる。農業であれば収穫時期の把握、都市であればマンションや駐車場などの需給予測が可能になる。中村氏は「特に変化の激しい発展途上国の情報に関して潜在的ニーズが大きい」と話す。

 宇宙ビジネスへの期待は高く、宇宙政策委員会がまとめた「宇宙産業ビジョン2030」は、30年代の早期に日本の宇宙産業の市場規模を現在の1兆2000億円から倍増させる目標を掲げる。

 追い風は吹くものの前途は多難だ。アクセルスペースにとっては、数億円の超小型衛星であっても、一基の打ち上げ失敗が経営を左右しかねない。それでもリスクを背負い、新時代のインフラをつくることで「近い将来、売上高3桁億円を目指す」(中村氏)と宇宙に挑み続ける。