世界の塗料大手が覇権を握るのは、欧州、米国、そして中国が中心。それぞれの市場で既に一定の規模を持ち、収益性が高い。一方で、アフリカや中東といった地域の収益化はまだ先で、大手も攻めきれていなかった。
2011年、石野社長が専務時代に買収した南アフリカ最大手のフリーワールド・コーティングス(現関西プラスコンアフリカ)。同社を核に、ジンバブエ、ザンビア、コンゴ共和国と南アフリカを北上する形で事業を広げている。
今年8月にはケニアにも拠点を確立。アフリカ最大のGDP(国内総生産)を誇るナイジェリアにも足場を築いた。5年前にはゼロだったアフリカ市場の売上高は、2016年3月期には300億円規模に拡大。建築向け塗料では現在、アフリカの市場シェアでトップを握る。
建築向け塗料は、一般に国民の平均年間所得が1000ドル(約10万円)を超えると需要が急増し、さらに2000ドル(約20万円)を超えると、モータリゼーションが始まり、自動車向け塗料の需要が増え始めると言われている。建築向けで事業基盤を構築できれば、その次に来る自動車向けの需要もそのまま取り込むことができる。
同様に、大手が入り込めていない中東地域でも攻勢を強めている。今年買収を発表したサウジアラビアの塗料メーカーは、プラント設備向けの工業用塗料を手がける。ここでも、自動車以外の分野を伸ばして市場に入り込み、市場を切り開いていく考えだ。
アフリカや中東地域においても、世界大手の進出は時間の問題だ。実際、アクゾ・ノーベルはアフリカでのビジネスを広げ始めている。
先行する関西ペイントが問われるのは、大手が本格進出してくる前に、どれだけスピーディーに事業基盤を固められるかだ。
「レートカマーは『何でも自前』という発想を捨てなくてはならない」と石野社長は強調する。自前、提携、M&A(合併・買収)など、進出するための方法にはこだわらない。買収や合弁会社の設立となった場合でも、100%支配することは考えていない。
重視するのは、出資先の理念と関西ペイントの理念が同じ方向を向いているかどうか。「目指す山が同じなら、登り方が多少違っても問題ない」(石野社長)。経営方針を尊重し、経営陣を入れ替えることもない。これが、提携相手との間に信頼を生み、買収や提携案件の締結スピード向上につながる。
2016年10月に決まった、トルコの化学メーカーであるポリサンホールディングス傘下の塗料メーカーへの出資案件は約5カ月でまとまった。
この塗料メーカーは以前、世界大手とも出資交渉をしていたが、経営体制を大手と合わせるよう要求されたために交渉が難航、1年たっても話は進展しなかった。一方、関西ペイントとの交渉では、「経営の独立を維持するという方針に共感してくれた」(赤木雄執行役員)という。
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