海外にも自動車メーカーと共に早い段階で進出してきた。インドやアジア地域の事業は拡大を続け、あと数年で国内事業を上回る勢いだ。2016年3月期の連結売上高は前期比6%減の3281億円、営業利益は同10%増の347億円。円高の影響で減収だったものの、海外事業の拡大基調は変わっていない。

 それでも石野社長の表情は険しい。「世界トップと比較すれば、我々はまだまだ小さい。このままでは世界大手の一角には食い込めない」。

 海外進出が早かったのは、顧客である自動車メーカーに塗料を供給するため。「自ら現地で塗料事業を切り開くという意識はあまりなかった」と妹尾潤・常務執行役員は振り返る。

 世界で約13兆円と言われる塗料市場のうち、自動車向け塗料は6%程度にすぎない。市場の約4割は住宅やオフィスの内外装向けの建築用塗料が占めている。しかし、自動車向けで強く、日本国内で建築用塗料の市場が小さかったこともあって、この分野で関西ペイントの存在感は小さい。

 それでも社内の危機意識は希薄だった。トップクラスのシェアを持つ自動車向け塗料での「勝ち組意識」が、海外事業の拡大を阻んでいた。

 2014年、そんな雰囲気を劇的に変える出来事が起きた。当時、国内2位だった日本ペイントが持ち株会社制に移行し、シンガポールの塗料大手、ウットラムグループとアジアで展開する合弁会社を連結子会社化した。連結売上高で5000億円規模となった日本ペイントは、関西ペイントを抜いて塗料メーカー国内最大手となり、世界でも5番手前後に躍り出た。

世界の業界再編に出遅れる

 一方、関西ペイントは10位前後。自動車向け塗料だけでは世界トップグループには入れないことは明らかだった。

 気がつけば、世界の塗料業界の再編は終盤に入りつつあった。蘭アクゾ・ノーベル、米PPGインダストリーズといった世界大手はこの10年で買収を次々としかけ、着実にグローバル体制の基盤を固めていた。

 国内では強い事業基盤を持ちながら、世界展開には出遅れる。関西ペイントは典型的な“内弁慶”企業となっていた。

 しかし、石野社長は挽回の余地は十分にあると考え、諦めなかった。2013年4月の社長就任以来、世界で巻き返すための手を着実に打ってきた。「我々が世界市場でどんな存在なのかを明確にし、戦い方を絞り込めば、世界大手の一角には食い込める」(石野社長)。

 石野社長はまず自社を「ミドルクラスのレートカマー(中堅の遅参者)」と位置づけた。国内では大手でも海外では中堅。しかも先行者ではなく、遅参者である。挑戦者としての海外市場での戦い方は、これまでとは違うものになるべきだ──。関西ペイントをこう再定義した。

 そして、次の3つの基本戦略を策定し、事業拡大を目指している。いずれも、世界大手とは異なる方法だ。

遅参者の戦い方 ①
アフリカ・中東に勝機

 「ナイジェリアの現地塗料メーカーと合弁会社を設立」「ケニアの塗料大手買収に向け合意」「トルコの塗料大手との出資交渉を開始」…。

 2016年、関西ペイントはアフリカ・中東地域で合弁会社の設立を次々と発表している。

 最初の打ち手は、世界大手がまだ着手していない市場を狙い、重点的に開拓することだった。その象徴が、冒頭のザンビアをはじめとする、アフリカ市場の開拓だ。