常務執行役員兼 インディードCEO
出木場 久征氏 ![]() [Idekoba Hisayuki]
1975年生まれ。99年リクルート入社。全社WEB戦略室室長などを経て2012年にインディード買収を主導。16年から現職(写真=竹井 俊晴) |
こう断言するのは出木場久征氏。12年にリクルートが約965億円で買収した求人検索エンジン大手、米Indeed(インディード)でCEO(最高経営責任者)を務める。技術に磨きをかけて顧客を増やし、買収後5年間で売上高を12倍(16年12月期は11億700万ドル=約1250億円)に引き上げた。
「求人検索のグーグル」とも呼ばれるインディードは、世界60カ国以上で月間約2億人が利用。米国や英国で利用者数トップを獲得している。
リクルートがグローバル展開の中核に据えるのが、このインディード。IT(情報技術)を駆使したビジネスモデルが、人材サービスの領域を一変させると期待しているためだ。
求職者が例えばキーワードに「ITエンジニア」、勤務地に「東京都港区」と入力して検索すると、瞬時にネット上の各種求人サイトや企業のサイトにある情報を収集・分析し、港区で働ける求人情報を画面上に一覧表示する。利用者は無料で申し込みや資料請求ができる。採用する企業側は有料サービスを利用し、自社の検索結果を上位に表示できる。インディードはこうした顧客企業からクリック数に応じた広告料を受け取る。
従来の求人情報サービスは、自社サイトに登録する利用者を囲い込み、企業からの求人広告料や転職時の成果報酬が収益源。ものをいうのは、サイトの独自性や広告を出してくれる企業への営業力だった。それがITに取って代わられる。
インディードは04年の設立以来、ネット上の膨大なデータを収集し、機械学習で検索の精度を向上。数千の企業サイトや求人サイトにある数百万件の求人情報と、求職者とを最短距離で結びつける技術を進化させ続けてきた。
リクナビとの「共食い」いとわず
「1クリック、1分で転職が可能になる世界を作る」。それが出木場氏の描く未来だ。野村証券の長尾佳尚アナリストは、「売上高が100億円程度のインディードに1000億円近くを投じた当時の買収は、他の会社では考えられない。しかし、今から振り返れば正しい経営判断だった」と評価する。
しかし、インディードがもたらす業界への「破壊力」は、リクルート自身にも跳ね返ってくる。
知名度の高いリクナビをはじめ、リクルートの国内の人材募集事業は売上高が2666億円(17年3月期)と決して小さくない。そんなリクナビも、インディードの存在感が増せば、利用者を囲い込み続けられるとは限らない。さらに、求人・採用にあたってインディードをメーンに据える企業が増え続ければ、将来的に収益源を奪われ、のみ込まれる可能性すらある。
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